ホームセミナーセミナーレポート人事実践セミナー 2022年3月24日

セミナーレポート

人事実践セミナー

テレワークで生産性を高めるマネジメント&コミュニケーション術

ビジネスコーチ株式会社 パートナーエグゼクティブコーチ ファイヤー株式会社 代表 長田 卓史 氏

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コロナ禍の影響からリモートワーク/テレワークが急速に広まりました。「オンラインでのコミュニケーションやマネジメントが難しい」「管理職が苦労している」という声が聞かれる一方、孤独や不安を感じている社員も増えているようです。
今回のセミナーでは、ビジネスコーチの長田卓史氏をお迎えし、ロールプレイなども挟みながら、オンラインでのマネジメントとコミュニケーションについて、実践的なアドバイスを頂きました。

長田氏は、ウィズコロナ時代における働き方の変化について「新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、働き方の変化が進んだが、それは第4次産業革命と言われる新時代が到来するタイミングと重なっただけ」と分析、こうした変化の流れの解説からセミナーはスタートしました。
出社とリモートワークの使い分けが進み、上司・部下との関係性構築は1on1ミーティングを重視する方向に変化してきました。社会全体の意識が、仕事優先からワークライフバランス優先へと変化する時代にあって、もはやリモートワークは「仮」の姿ではなく、これからは「定番」となります。調査によると、コロナ禍収束後もテレワークを行いたい人は、全体の6割を超えています。一方、リモートワークを行っている人がさまざまな不安を抱えていることも事実です。例えば「私は孤立しているように思う」といった孤独感を、3割近い人が感じており、その割合は若い世代ほど高くなります。
こうした問題に対して、企業はどう取り組んだら良いでしょうか。

リモートワークにおける生産性を高めるためには、オフィス環境や通信インフラの整備が欠かせないのは勿論ですが、連帯感やモチベーションを低下させないことが重要です。
モチベーションを構成する要素は、以下の5点です。
①技能多様性: 求められるスキルが多様である
②タスク完結性: 部分ではなく、仕事の全体を把握できている
③タスク重要性: 他者・社会に良い影響を与えている
④自律性: 仕事の進め方に自ら関与している
⑤フィードバック: 自身の実践の効果に関する評価が知らされる

そしてここから、リモートワークで生産性を高めるための4つの観点と解決策が導き出されます。
①メンバーとの信頼関係: 1on1ミーティング等、対話を通じて不安を解消
②心理的安全性の高い場の創出: リモート/対面会議のファシリテーションスキル向上
③仕事の任せ方: 目的・目標を明確にしたミッション型アサインメントの実行
④評価制度: 評価指標の明確化
また、危機状況下で、従業員は「信頼」「思いやり」「安心感」「希望」という4つのニーズを求めているので、マネジャーはこれを意識してコミュニケーションを取ることが大切です。

直ぐに活かせるリモート・コミュニケーションのコツとしては、まず「共感」「傾聴」「承認」をキーワードに相手を観察し、理解・尊重することです。相手に働きかけるには「ティーチング(指導する力)」「フィードバック(伝える力)」「コーチング(質問する力)」が必要ですが、これらのスキルを持っていても「印象管理」が出来ていないと、テレワークにおけるコミュニケーションは上手くいきません。印象管理とは、相手に好意的な印象を持ってもらうために行われる意識的・無意識的な行動であり、リモート・コミュニケーションでは以下のポイントが大切です。
①表情にメリハリを持たせる(笑顔で、ポジティブな雰囲気を作る)
②声のトーン・大きさは2割増
③ボディランゲージで、距離感を近づける
④深く、しっかりとうなずく
目線が相手と同じ高さになるように、パソコンの高さを調節したり、ボディランゲージが伝わるように、上半身が映る距離を取ることも有効です。さらに、メンバーとの信頼関係を構築するために欠かせないのが「傾聴スキル」。相手の話を遮らずに最後まで聴き、相手に「よき理解者」と感じてもらえることを心掛けます。

続いて、生産性の高いオンライン会議術です。ファシリテーションには、ゴールを達成するために、参加者の能力を最大限に引き出すスキルが必要で、ただの司会者とは異なります。また、多様な価値観を持つ人が集まる環境の中で、新しいビジネス・アイデアを生み出すためには、①場を創る ②意見を引き出す ③整理・構造化する ④まとめる という流れに沿って、会議を進行することが重要です。
また、生産性の高い会議はIPO(インプット・プロセス・アウトプット)を意識して設計されます。
①Input(情報・事実の共有): 目的・ゴール、論点が明確で、必要な情報が共有されている
②Process(会議の進め方・時間配分): 議論の目的に応じたプロセスが設計されている
③Output(最終決定事項): アウトプットが、タスクリストとして可視化されている
会議では、意見を発散させアイデアを拡げた後に収束させることで、革新的なアイデアを創造することができます。それを促すのがファシリテーターの役割です。会議を設計する段階では「目的・ゴール/何のための会議で、何を達成したいのか」「参加者/誰と議論すべきか」「進行/議論をどう進めるか」「準備物」の4つを揃えることが大切です。きちんと設計し議論がしやすい状態を整えたとしても、出席者が「黙ってしまう」ことはあります。これを防ぎ、会議を活性化するポイントは以下の4つです。
①『ここまでで質問はありませんか?』と途中で確認する
②『考えをまとめる時間を2分取ります』と思考タイムを取る
③顔色・振る舞いを見て『◯◯さんは、どう思いますか?』と指名する
④チャットボックス・ホワイトボード機能等を使い、意見を可視化する
最も大切なのは「意見の可視化」です。もちろん、これらをマネジャーが一人で行うことは不可能ですので、決済するリーダー、進行役のファシリテーター、議事録を取るグラフィック担当などを、チーム内で分担することが基本です。その上で、オンライン会議を生産的に行うためには、出席者全員が以下の作法を徹底することが必要です。
①全員が必ず発言する
②発言は、要点をワンメッセージで伝え、1分以内にまとめる
③『以心伝心』『忖度(そんたく)』『あうんの呼吸』は禁止する
④ボディランゲージやツールで発言に対するリアクションを示す
⑤真剣に議論しつつも、常に『笑顔』を忘れない

長田氏は、全体を振り返り、
・働き方は、既に出社とリモートのハイブリッド型になっている
・従業員のニーズは、信頼・思いやり・安心感・希望
・生産性を高めるには
『メンバーとの信頼関係』
『心理的安全性の高い場の創出』
『仕事の任せ方』
『評価制度の見直し』
という4つの観点が重要、と最後にまとめ、セミナーを締めくくりました。

◎セミナーを終えて

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    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    私自身がテレワークやオンライン会議に慣れていなかったため、長田氏のプレゼンテーション話法や、参加者とのオンラインでのコミュニケーション方法から、学ぶべきことが多かった。特に、オンライン会議では相手の表情を読み取ること、こちらの表情を良くすることが、会議の活性化に繋がるという点は、今後自らも必ず実践すべきと感じた。今後また、テレワーク時の部下への適切なマネジメントのコツ、係員の立場から見た上司の指示に的確に対応するコツ 等についても学びたい オンライン会議が当たり前になった昨今、オンラインだからコミュニケーションが希薄になったという状態から早く脱却出来るよう、管理者のスキルを磨き、弊社も競争力を付けていくべきだと思った カリキュラムに参加者同士の意見交換を取り入れることで、参加意識が高まった。また、講義内容も具体的で直ぐに実践に使えると思う内容で、とても役立った 印象管理の重要性を認識出来た。直ぐに実践できる事も多かったので、早速取り組んでみたい 全体として急ぎ足ではあったが、ポイントを簡潔にまとめてもらい、わかりやすかった。グループワークの時間は少し足りなかった 内容が盛りだくさんだったため、もっとテーマを絞ってじっくりと聴きたかった 管理職としてのスキルアップや意識啓発にかなりウェイトが割かれていたため、当事者としてはタメになったが、全社人事施策検討担当者の立場で参加したため、そちらの観点からは期待していた内容と少し違っていた
  • 登壇者の感想は・・・

    ビジネスコーチ株式会社 長田 卓史 氏

    ビジネスコーチ株式会社 長田 卓史 氏

    「テレワークやオンライン会議の黎明期において、非言語コミュニケーションの重要性及び非言語コミュニケーション手法を、講師のデモンストレーションや参加者同士のワークを通して学んで頂きました。特にオンライン会議では、相手方の表情を読み取ること、自分の表情やジェスチャーを使って表現することが、会議の活性化につながることを実感して頂けたかと思います。本セミナーを通して、テレワークやオンラインでのコミュニケーションに対する苦手意識や抵抗感を払拭し、皆様のワークライフバランス向上の一助になれたならば、幸いに思います」