ホームセミナーセミナーレポートダイバーシティ研究会 2022年9月27日

セミナーレポート

ダイバーシティ研究会

BIPROGYのダイバーシティ&インクルージョン推進への取り組み

BIPROGY株式会社(旧社名:日本ユニシス)
人事部 ダイバーシティ推進室長 太田 志保 氏

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経済産業省が「ダイバーシティ推進」によって、多様な人材の能力を活かし、価値創造につなげている企業を表彰する「100選プライム」に選定され、その後も継続的にダイバーシティ&インクルージョンを推進し実践しているBIPROGYの太田志保室長より、同社の取り組みの紹介と成果ならびに今後の展望をお話し頂きました(以下、ダイバーシティ&インクルージョンをD&Iと記載します)。

■D&I推進のあゆみ

当社は、2013年度に専任組織であるダイバーシティ推進室を設置し、「女性活躍推進」と「ライフイベントと仕事の両立支援」をD&I推進の柱としてスタートしました。2015年度には女性活躍推進法の行動計画を策定し、女性管理職比率10%を掲げ、2016年度には風土改革推進部門として、人事部と並列した組織「組織開発部」を設置し、2018年度には中期経営計画の重点戦略のひとつに、風土改革を掲げました。2020年度に女性管理職比率10.2%となり目標を達成、2021年度からは、マテリアリティとして、女性の管理職比率:グループ平均=18%を掲げ、グループ一丸となって取り組んでおります。

■ダイバーシティ2.0にもとづく取り組みの紹介

① 経営戦略への組み込み
当社は2021年度、長期にわたり果たしていく社会的役割としてPurpose(存在意義)を明らかにするとともに、Principles(原理・主義)および2030年に向けて進むべき方向性を定めた「Vision2030」を制定しました。Principlesには「多様性の受容と獲得」が明記されています。また、「Vision2030」の実現に向けて、社員がイニシアチブを取って社会に働きかけ、解決に向けてチャレンジしていけるよう、風土改革を推進しています。
人財戦略におけるD&Iは、多様な人財を活用する観点はもちろんのこと、個人の中の多様性を拡げ可視化することも含まれると考え、重要な施策として、業務遂行における役割や、その際に必要となるスキルやコンピテンシーを定義し、多様な「個」による組織力強化を目指す「ROLES」があります。この取り組みは開始したばかりで、現場部門の声を聞きながらブラッシュアップしている最中です。
また、経営リーダーの7つのコンピテンシーのひとつとして「D&I」を設定しています。
経営トップが全社員に向けて継続的にメッセージを発信し、一方で社員はSNSで直接意見を投稿できるようにするなど、インタラクティブなコミュニケーションを可能にしています。

② 推進体制の構築
環境や社会のサステナビリティをめぐる課題への取り組みを行う経営直轄の「サステナビリティ委員会」の下部組織となる「ソーシャル委員会」において、マテリアリティの進捗管理などを行っています。D&Iに関しては「ダイバーシティ推進室」が、グループ各社と連携して、マテリアリティ達成に向けて取り組みを進め、「ソーシャル委員会」に報告しています。D&I推進状況は、第三者機関の調査や全社員向けアンケート、エンゲージメントサーベイなどで把握し、施策の浸透度や組織の変容度などを鑑みながら、改善に活かしています。

③ ガバナンスの改革
取締役会、監査役会において、ジェンダー・ダイバーシティを実現しています。上場企業の社外役員経験や、SDGs経営におけるさまざまな支援実績、経営についての内外の豊富な経験・知見、多様なバックグラウンドをスキル・マトリックスとして公開し、タスク型のダイバーシティを可視化しています。

④ 全社的な環境・ルールの整備
働き方の選択肢の多様性については、比較的早くから在宅勤務制度や休職制度が整っていましたが、コロナ禍により制度が見直されることで、さらにテレワークや時間給の取得など、個々の状況に合わせて選択できる幅を拡げました。また、多様な働き方をイントラネットで公開し、社員に対する制度活用方法を啓蒙しています。

⑤ 管理職の行動・意識改革
全管理職向けに、様々な属性に関する基礎知識、多様な個性を活かすためのマネジメントの基本知識の習得を目的とし、「意見の多様性」「介護」「育児」「障害」という4つのテーマのダイバーシティマネジメント研修を実施しています。
そして、マネジャーが一人ひとりの声を聞く風土が醸成されることを目標に、部下との1on1、「ユアタイム」を実施しています。
また、多様な個を活かす組織マネジメントとして、エンゲージメントサーベイを軸にした運営を進めています。管理職は自組織のエンゲージメントサーベイ結果を鑑み、組織目標を設定し、結果に基づきアクションプランを策定・実行し、組織の状態改善を図っています。

⑥ 従業員の行動・意識改革
社員が主体的なキャリア形成ができるよう、キャリアデザインやキャリア開発を支援する制度・仕組みを用意しています。
自主参加型のプログラム、年代別キャリアデザイン研修などのキャリア開発支援や、3コースの選択肢がある雇用延長制度(ネクストステージインテグレーション)や「シニアエキスパート」制度等もあります。
また、育休から復職後までの支援として、産休前・復職後の3者面談、夫婦参加型のワークショップ、座談会なども男女関わらず実施しています。
女性向けには、階層別女性向けリーダーシッププログラム実施や、同業他社との女性ネットワークへの参加促進等により、自身のキャリアに対して広い視野で考える機会を提供しています。
2020年度からは、対話を通じてD&Iを考え、ありたい姿を言語化するプロセスを通じ、D&I推進の意義や必要性に腹落ちし、会社や組織でD&Iを推進していく取り組みとして、「D&Iダイアローグ」を開始しました。現場部門の社員が本業とは別で、自組織をよくするために周囲を巻き込みながら、やりたいと思って活動していること自体が意義のあることだと考えています。

⑦ 労働市場・資本市場への情報開示と対話
一例ですが、女性活躍推進に関しては国連グローバルコンパクトとUNWomenが協働で作成した女性のエンパワーメント原則「WEPs」への署名、経団連の2030年30%チャレンジへの賛同表明、厚労省のデータベースや自社の社外WEBなどで、女活法に基づく行動計画、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画などを公表しています。

■取り組みの成果と今後の展望

女性管理職比率は2022年4月1日時点で、情報通信業の業界平均8.2%を上回り、10.6%と過去最高となりました。また、男性育休取得率も38.7%で、こちらも過去最高で、順調に取得率が上がっています。外部評価としては、えるぼし、くるみんなどの認定のほか、2017年から5年間、MSCI日本株女性活躍指数の構成銘柄に採用されました。また一昨年度に100選プライム、昨年度になでしこ銘柄に、それぞれ選定されました。
ワークライフバランスの観点では、有休休暇取得率や月当たりの残業時間、生産性やエンゲージメントスコアも向上し、2021年度には「Best Motivation Team Award」を受賞しました。
業績と非財務指標の相関性は単純ではありませんが、D&I推進の地道な取り組みも業績向上に寄与できていると考えています。

太田氏の講演後は、質問が多数寄せられ、参加者の関心の高さが表れていました。一つひとつの質問に対して、丁寧に回答して頂いた後、最後に太田氏から、
「自社のD&I推進に取り組むことで、日本社会のD&I推進に貢献したいと考えています。D&Iを推進する人口は全体で見るとまだまだマイノリティなので、本日こちらにいらっしゃる皆さまともこれを機会にぜひ情報交換などをさせていただいて、D&I推進を盛り上げていけたらと思います」
とのメッセージを頂き、今回のダイバーシティ研究会は幕を閉じました。

◎研究会を終えて

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    ダイアローグ、対話が大事だというお話や、「評価には結び付けない」の件で、「自発的に思いを持って活動するその気持ちが草の根運動、そして風土変革へとつながっていくと考えている」というお話が、とても印象に残った。 当社は、ダイバーシティ推進部が発足してまだ3年目だが、変革が中々進まないことに少しずつモチベーションを削られていた。しかし他社でも10年という長期間をかけて進められていることに勇気付けられた。BIPROGYの施策を参考にしながら、諦めずに前を向いていきたいと思った。 地道な取り組みを積み重ねて、「自分ゴト」で捉えられる従業員を増やす活動が参考になった。兼任する推進者は評価の対象ではないとの事で、そのような考え方もあるのかと感心した。また、これまで数百名の方がD&I活動に参画されたという従業員の意識の高さに感心した。 男性育休取得率が高かったり、他社と比較して制度が上回っていたり、大変うらやましく思った。 他社の事例はとても参考になる。BIPROGYは活動の開始が早く、弊社より先行しているため、いろいろな施策の良い点や考えさせられる点があった。 貴重な取り組みを共有して頂き、感謝している。取り組むステップ、スポンサーの巻き込み方(その後の場作りや推進役など、まさに理想的)、確実に成果を出されている事など、何よりも太田氏の説明がとても分かりやすく、その点でも参考になった。 全て参考になる事例だったが、特にスポンサーチームを作られて、ワークショップを実施し、現場を巻き込んでいることが大変印象に残った。 BIPROGYのお話を伺いながら、改めて自社の取り組みを振り返り、BIPROGYの取り組みと比べるとまだまだ不足している点や出来ることがたくさんあることを実感した。これから自社の取り組みを再度整理し、更なるダイバーシティの推進に向けた施策を引き続き検討・実行し、変化させていきたい。 D&Iの推進を他人事、やらされ感になってしまわないようにされている取り組みが印象的だった。新たな取り組みに関しては、どうしても推進部隊と現場との温度差があり、どうしたら良いかが課題になるため、たいへん勉強になった。 10年近く前からすでにD&Iに取り組んでいる先駆者としての取り組みを聞かせて頂き感謝している。経営層の意識改革、意識醸成から時間をかけて取り組んでいることが、全体推進の肝であるように思ったので、参考にしたい。Q&Aにもあった「女性社員だけを集めることへの疑問」は、やはり他社でも一緒なのだなと感じた。女性活躍推進が、社内でのコンフリクトを生むことなく実現出来るよう、本人達のみならず周囲への丁寧な発信が重要だと改めて感じた。 D&Iを社内でどう進めて良いかわからない状態なので、現在情報収集中である。D&Iダイアローグは非常に興味深い取り組みだった。できれば役員層がどのように腹落ちしていくのかについて、もっと詳しく聞きたかった。 ダイバーシティ2.0にそって、着実に推進していらっしゃることが印象的だった。ぜひ参考にさせて頂きたい。今後取り上げてほしいテーマとしては、エクイティについての具体的な取り組み事例をお聞きしたい。 当社ではD&Iの社内理解はまだまだこれからという段階であるが、今日のお話はとても参考になる部分が多かった。施策の具体化が大きな課題ではあるが、現状で出来ることから着実に取り組んでいければと考えている。改めて、取り組み事例のスモールステップの進め方(まずは何から取り組む、整えていくのか)にフォーカスしてもらうと、さらにヒントが得られると思う。
  • 登壇者の感想は・・・

    BIPROGY株式会社 太田 志保 氏

    BIPROGY株式会社 太田 志保 氏

    「この度は、貴重な場を頂きまして、ありがとうございました。多くの皆様からご質問を頂き、大変感謝しております。少しでも皆様のご参考になりましたら、幸いです。当社のD&I推進もまだまだ道半ばですので、これを機に皆様とも情報交換をさせて頂きながら、さらに取り組んでまいりたいと思います」