ホームセミナーセミナーレポートオンライン公開講座 2022年10月19日

セミナーレポート

オンライン公開講座

“社内ロールモデル”から紐解く、活躍するシニア人材の共通項

NTTコミュニケーションズ株式会社 ヒューマンリソース部 キャリアコンサルティング・ディレクター 浅井 公一 氏
《活躍中の社内ロールモデル3氏》
勝木 信二 氏 (ソニー)
三木 清美 氏 (サントリーホールディングス)
平林 誠一 氏 (博報堂DYホールディングス)

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今回の公開講座は、役職定年を迎えた後も継続して社内で活躍中のロールモデルとなる方々をお迎えし、その活躍の秘訣を紐解きながら、シニア活躍のための本人の意識や行動、それを支える企業の役割を考察しました。

【PART1】 ミドル・シニアの「キャリア自律のメカニズム」 ~人は何が起きるとキャリア自律に目覚めるのか~
NTTコミュニケーションズ 浅井 公一 氏

(1) キャリア自律の必要性

まず、何故ビジネスパーソンが、ミドル・シニアになってもキャリア自律をしなければいけないのか、その理由について、4つの視点から考えていきます。

◎第1の視点…世の中がミドル・シニアを煽る言葉は通用するか?
「終身雇用や年功序列の崩壊」「既存の仕事のAI化」等の煽り言葉が、果たしてどの位の人に届くでしょうか。少なくとも弊社では、あまり効き目がないと感じています。こういった世の中の煽り言葉は、必ずしも現実と一致しないと言えるでしょう。

◎第2の視点…収入をどの様に確保していくか?
特に年金は、シニアにとって非常に重要な問題です。様々な説がありますが、給付額は減り続け、支給時期は先延ばしされる一方であるいうことは、明確な共通見解です。
また、退職金はその時のご時世や経営状況により会社都合で簡単に変更し易い性質のものです。この先、退職金が減ることはあっても増えることはまずないでしょうし、成果が問われる時代になるため、多くの企業で退職金の存在自体の是非を検討し始めることにもなるでしょう。退職金のあり方や世の中の動向に、アンテナを高く張っておく必要があります。
70歳までの定年延長の義務化も、近々確実になると見込まれています。そのために企業としては、成果を出せる人と、そうではない人の賃金格差を大きくするしか方法はありません。ハイパフォーマー・アベレージパフォーマー・ローパフォーマーの3極化が進んでいき、将来的にこの格差が広がっていくことは容易に想像が付きます。

◎第3の視点…人事はどのようにして、ミドル・シニアの働きがいを維持させるか?
弊社では、深刻な高齢化が進み、2030年には3人に1人が再雇用者になると見込まれています。その際に今の40代は、上司からの課題と60代のトレーナー役等、課せられた非常に重い責任に耐えられるでしょうか。この先起こり得る「リスキリング/リカレント」ブームを予告してあげることで、モチベーションを上げてもらう事も良いでしょう。求められるのは「エンプロイアビリティ(雇われる力)」です。また、ミドル・シニアの世代こそ、現役中の活躍こそが、人生トータルの幸福を呼ぶと考えています。平均寿命が延びる一方で健康寿命の延びが極めて遅い事から、介護されながら生きていく時間が延びていくということです。そのため、70歳まで働く時代を想定すると、働いている期間をいかに楽しく活躍して過ごしていくかという事が非常に大切になるのではないでしょうか。

◎第4の視点…キャリア自律は個人にどの様な恩恵をもたらすか?
弊社で実施した調査では、キャリア自律をした人は「パフォーマンスが高くなる」「仕事への納得感が高くなる」「仕事を楽しめる」「人生満足度・幸福度が高くなる」という結果が示されました。「進む道を自分で決める事が出来る」「”今、現在”を頑張る事が出来る」この2つこそが、キャリア自律をした人の最大にして最高のメリットであると主張したいと思います。

(2) NTTコミュニケーションズのキャリア面談の取り組み

弊社では、「変わる約束」をするまで終わらないキャリア面談を取り入れ、面談のゴール地点を、かかった時間ではなく、行動をコミット出来た時としています。また面談後には、キャリアコンサルタントから上司によるキャリア自律支援方法を書面でフィードバックしています。上司が気付いていないであろう価値観等を伝える事で、上司側のサポート姿勢も変えてもらおうという考えからです。

(3) キャリア自律のメカニズム

これまで追い続けてきた行動変容率やキャリア自律をした人の割合の推移 等の結果から、自律のメカニズムには、以下の条件が必要であると考えています。

・第1の条件…「変わらなきゃ!」という気持ちが存在していること
・第2の条件…「私は成功できる」という自信が存在していること
・第3の条件…チャレンジすることによるメリットがデメリットを上回ること

このことから『思い×自信×損益分岐=自律』というキャリア自律の方程式が成り立ちます。そして、この”思い”は研修や面談で感情を呼び起こすこと、つまり会社主導で起こすことが出来るということです。但し、この方程式は「なりたい姿」つまり「キャリアビジョン」がないと成立しません。では、キャリアビジョンがない人はどうしたら良いのでしょうか。そのような人には、選択肢を与えることが必要です。弊社ではキャリアカタログを用意し、フリーに「描く」のではなく、いくつかの道の中から「選ぶ」ことをしてもらっています。

(4) キャリア選択の成否を分けるもの

なりたい姿を見つけるためには、この先のキャリアにどの様な選択肢があるのかを「知っているか?知らないか?」それが全てであると言っても過言ではありません。知るから選べる。道が明確になるから行動に移せる。人は決意のもとに行動するとき、モチベーションが最高潮になります。企業や人事の皆さんには、どうすればその道に行くことが出来るのか、その手段を語れることも非常に大切であると思います。

【PART2】 トークセッション 「社内ロールモデルの皆様に聴く、シニア人材が活躍する秘訣」
[パネリスト] 勝木 信二 氏・三木 清美 氏・平林 誠一 氏
[モデレータ] 浅井 公一 氏

続いてのトークセッションは浅井氏の進行で、シニアの範となる働き方をされているロールモデルとなる3名のゲストに、これからの時代における活躍スタイルに関して意見を交わしていただきました。

Q1.管理職としてのご自身の例として、
・役職定年後の心の切り替え方や、第二のキャリアを実りあるものにするためのノウハウ
・「目覚めよう」と思ったきっかけやその時の感情、どうマインドチェンジしたか

■勝木氏
相手の話をじっくりと聴く事=「傾聴」を大切にして、若い人と自身の経験が活きるような話をすること、その機会を増やすことが、先に進んでいくエネルギーに変わっていきました。
■三木氏
自分が貢献出来る軸をイメージすることです。どのような所で活躍出来そうか、どのような価値を生み出せるのか、少しでも早く考え準備しておくことが大切です。また、その思いや考えをきちんと聞いてくれる上司側の指導も、非常に大切であると思います。
■平林氏
私の場合は「変わらなきゃ」と思う経験があったことが、大きかったように思います。研究開発部門の時代に全く仕事がなかった経験をしたことがきっかけとなり、常に自分で研究テーマを考え成長していかなければならないと思い、そのことが今も癖になっていると思います。

Q2.役職定年によって役職と部下が奪われ、給料も下がることにより不貞腐れる方も多いと思いますが、外部報酬から内部報酬にやりがいを切り変えるに至った経緯や苦闘は?
■勝木氏
私の場合、先に行動に移したことが、後付けで考えるとやりがいに繋がったと感じています。業務に従事する中で、承認してもらえることを通し、役に立っているという実感が生まれました。これまでは給料が評価のベースだと考えていましたが、承認されることがどんなに力になるかを学びました。また自身の上司をどうしたら昇進させられるかを考え、行動に移したことで、上司との関係も良くなり、仕事もよりやりやすくなり、全てが上手く回っていきました。そのためには、まずは行動すること、置かれた場所で一生懸命に頑張ることが大切であると考えています。

Q3.キャリアの軸が見つからずに悩む方が多い中、比較的早い時期にその軸が見つけられたコツは?
■三木氏
軸にするべきものとは、自分がその仕事をしていてモチベーションが沸くもの、楽しいと感じられるものであると思います。特にシニアの方には、ライフラインチャートを書いてもらい、楽しい時はどの様な気持ちだったかを振り返ってもらうことにしています。好きなものの中に強みがあり、その強みが軸になっていくと考えています。また、嫌いな仕事でも認められることで好きになっていく場合もあると思います。自分の軸を見つけるために、好きなことから得られる価値について何回かwhyを繰り返しながら、深堀りしていくことも大切ですね。

Q4.自身がやりたいことが出来ない会社も多い中で、やりたいことをやる為には?
■平林氏
今与えられた仕事をしっかり全うすることが大前提です。そうでなければ要望も聞き入れてもらえません。自身の業務や強みの中で、次に活かせる力は何か、会社に貢献出来ることは何か、しっかり考え計画すること。またそれを言語化し、プレゼンテーションが出来る力を身に付けることも大切なのではないでしょうか。

Q5.一般社員のシニアの方は、どの様に自身の活躍スタイルを見つけていったら良いのか?
■三木氏
弊社のTOO(「隣のおせっかいおじさん」の略。会社から正式に「おせっかい」の役割を拝命したシニア社員のこと)の例にもあるように、自らが率先して“隣のおせっかいおじさん”になることも良いと思います。
■平林氏
40代等の少し早い段階から、キャリア研修をある程度強制的に行い、早めにこの先の情報を与えていくことや、健康診断のように定期的にキャリアのことを考えてもらうことも大切と考えます。
■勝木氏
例えば業種を跨いだり、別の会社の人と一緒に行ったりと、研修自体に工夫を加えることも必要かと思います。

トークセッションの最後に浅井氏は、「人の気持ちは変えられるが、行動は変えられない。だからこそ、行動までコミットすることです。そのことこそが年齢を重ねても錆びないシニアを作っていくことや、ベテラン層の活性化に繋がると思います」とのメッセージで、本講座を締め括られました。

◎公開講座を終えて

  • 公開講座の内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    浅井氏の講演が非常に参考になった。当社でもちょうど研修を企画していたので、その後のフォロー(面談など)をしっかり検討していきたい。 浅井氏のお話がとても分かりやすく簡潔で、大変勉強になった。弊社でも今月、キャリア支援室が発足したので、今回の講座に参加させて頂き、とても参考になった。 登壇者の所属する各会社の自律的キャリア形成についての考え方や取り組みを具体的に聴くことができ、弊社の参考になるところがたくさんあり、大変ありがたかった。 弊社では今年度中にキャリア研修やキャリア面談を実施したいと考えており、本日のお話を伺え、大変勉強になった。キャリ自律の条件や、キャリア研修とキャリア面談をセットにすることが大切な点がよく理解できた。 「研修で気持ちは変えられるが、行動は変えられない」という言葉が腹落ちした。 具体的なお話がとても多く、非常に勉強になった。今後に向けたヒントをたくさん頂いた。同じようにはできない部分もあるが、弊社の施策も充実したものとなるよう、これから頑張って取り組んでいきたい。「ビジトレ」も早速拝読します。 各社の取り組み方やキャリア哲学が、非常に興味深く、とても大事であることが理解できた。 各社の具体事例も含め、非常に参考になった。浅井氏が講演で話された、変わる約束をするまでの面談実施、キャリアデザイン室へのアサイン人材要件、キャリアを描くことができないのであれば選択してもらう、といった点は、大いに参考になった。 パネリストの方々がほぼ同年代で、時代の変化や自分のキャリアをしっかり考え、実践してこられた様子が大変参考になった。 とても興味深い内容だった。どうすれば働き甲斐を維持しながら、70歳まで働けるのか、弊社の労務構成を考えると、大きな課題であり悩ましい問題でもある。浅井氏の講演とロールモデルの皆様のお話から、シニアの皆様が抱える問題を軽減する方策が少し見えたような気がする。 キャリア自律へ向かう理屈が、自身の考えと合致していて安心した。発奮にまでどう漕ぎつけるかが、私自身のテーマだ。 来月にミドル層向けキャリア研修を企画している中で、たまたま本講座の情報を得て受講した。今回の対象はシニア層だったが、行く行くはシニアになるミドル層向けにも非常に示唆に富んだ内容で、参考になる部分がとても多く、有益な時間だった。ミドル層は「中年期のキャリア危機」と言われるように、自らの価値観や仕事への意味付けを変容すべき時期でありながらも、なかなかそこから踏み出せない人がおり、どのようにして次の一歩を踏み出してもらうかを研修のテーマとしていたが、企画の参考となる情報を多く得ることができた。 キャリアコンサルタントは、キャリア面談では中立の立場で、時に現実を受け入れてもらうコメントもしないといけないということが、たいへん印象的だった。その際、伝える側は、面談対象者よりも年上のほうが良いのだろうか。言われる側は心情的に、若い社員より、ある程度年齢や経験がある方からのほうが受け入れやすいのではと感じるのだが・・・。 役職定年後や定年後は、仕事が変わる(=リスキリング)ことが前提なのだろうか?今まで培ってきたノウハウを活かすためには、同職種で成果を発揮するほうが良いと私は考えるが。 キャリアビジョンを描くにあたっての具体的なきっかけとなるヒントを幾つか頂くことができ、有意義だった。役職定年を経て、なおイキイキと活躍されている3人のパネリストの方々が、キャリアの転機にあたって考えたことや行動したことは、身近な事例として大いに刺激を受けた。これからもこのような事例紹介があるとありがたい。
  • 登壇者の感想は・・・

    NTTコミュニケーションズ株式会社 浅井 公一 氏

    NTTコミュニケーションズ株式会社 浅井 公一 氏

    「これまでキャリアのことなど本気で考える必要がなかったシニアは、社会や雇用の変化、働き方の多様化に突然に直面し、キャリア選択が混乱するばかり。しかし、その中でなんとかシニアの活躍推進を図ろうとする各企業の思いを、皆様からの質問から感じ取ることができました。3名のパネリストの方々のキャリア戦略に、ヒントがありましたね」
    勝木 信二 氏

    勝木 信二 氏

    「浅井様、三木様、平林様とご一緒に、参加者からの質問などを通して、いろいろとお話しでき、とても有意義な時間でした。私自身は、ただ夢中で仕事をしてきた感じではありましたが、改めて振り返ってみると、シニアにとって「存在承認」がモチベーションに繋がっているということを感じました。また、浅井様の“発奮・スタンス”は本当に素晴らしいです」
    三木 清美 氏

    三木 清美 氏

    「人生100年時代、シニアが社内外でイキイキと活躍し、自分の価値を発揮して社会や会社に貢献できることが、個人にとっても社会全体にとっても重要なことだと感じています。なにより登壇者の皆様のお話はそれぞれとても魅力的で、私もたくさんのヒントを頂きました。自分自身もさらに磨き続けながら、シニアの活躍推進に取り組んでいかなくてはと、改めて実感しています」
    平林 誠一 氏

    平林 誠一氏

    「浅井様、勝木様、三木様のお話、参加者の皆様からの質問を通じて、皆様が真剣にシニアの活躍支援に向き合っていることを感じることができ、このテーマに取り組む自分自身の気持ちを新たにすることができました。浅井様の信念と覚悟、とても印象に残りました。ありがとうございました」