ホームセミナーセミナーレポート人事戦略フォーラム 2025年12月16日

セミナーレポート

人事戦略フォーラム

輝き続けるシニアの本質とは?
~東光高岳に学ぶ、過去を手放し、素直に学び合う“再成長”のプロセス~

株式会社チームボックス 代表取締役 中竹 竜二 氏
株式会社東光高岳 執行役員 人財育成センター長 野村 智志 氏

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人生100年時代を迎え、シニア社員がもう一度学び、成長していくことは、多くの企業にとって重要なテーマです。けれども、長年の経験で身につけたやり方や考え方を手放し、新しいスキルを学び直すのは簡単ではありません。自分の強みと思ってきたものを見つめ直すことには、不安や戸惑いがつきものです。
そこで今回は、部課長や経営幹部の育成、エグゼクティブコーチングで数多くの実績を持つ中竹竜二氏が、シニア層が「もう一度学び始める」ための心理的な壁と、その乗り越え方を解説。個人の中に眠る成長意欲をどう再び引き出すのか、実践コーチングを通じた経験知をご紹介いただきました。
後半では、実際にシニア社員のリスキリングで戦略的な人財育成を進める㈱東光高岳様の事例を取り上げ、中竹氏の支援プロセスをもとに、変化を楽しみながら再び成長するためのヒントを探りました。
経験を“再編集”し新たな学びへつなげる秘訣を紐解いた、講演の要旨を以下にご紹介します。

【PART1】講演
輝き続けるシニアの本質とは?
〜東光高岳に学ぶ、過去を手放し、素直に学び合う“再成長”のプロセス〜

株式会社チームボックス 代表取締役 中竹 竜二 氏

輝き続けるシニアとは、「自分と向かい合い続けている人」です。
実際には簡単なことではありません。なぜなら、自分と向かい合う方法を教わったことがないからです。そこでまず取り組んでいただきたいのが、「自分語化」。高い当事者意識を持って自分ごと化し、自分の言葉で言語化する、という2つを組み合わせた私の造語です。キレイな言葉ではなく、自分で納得感のある言葉を使う。それが輝き続けることにつながります。
シニア層にはマネジメントを行うリーダーの方が多いと思います。マネジメントには、プロジェクト・マネジメント、組織マネジメント、人材育成マネジメントの3つが必要ですが、さらにもう一つ大切なのがセルフ・マネジメントです。これができていると輝き続けるシニアになれるとの考えから、我々はそのトレーニングを提供しています。
チームボックスは「大人が素直に学び合える社会を作る」をビジョンとして掲げ、リーダーを対象としたサービスに特化していますが、それは「リーダーが変われば組織が変わる」との理念に基づくものです。人は、誰でも、いつでも、いつまででも変わることができると信じて、マインドセットと行動変容の両面から成長支援を行っています。

成長のチェックポイントは「さらけ出す」「自責」「アンラーン」「成長を信じる」「習慣化する」の5つ。また、リーダーの役割は「方針を示す」「率先する」「つなげる」「メンバーのやる気を上げる」「役割分担」の5つです。大切なのは続けることです。我々のプログラムは、キックオフからはじまり、ロッカールーム(集合トレーニング)、ハーフタイム(コーチング)を挟みながら現場で実践し、最後にプレイオフ・セレモニーで修了・再出発します。継続的なトレーニングであることを意識するために、集合トレーニングでは「学んだことを現場で使っていますか?」と問いかけます。

「成長ピラミッド(リーダーの資質を表すフレームワーク)」による段階的育成アプローチでは、人間関係領域(コミュニケーション能力)と自己認識領域のスキルを磨き、その上に専門領域を育成することで、哲学領域を高めます。たとえば「リーダーの責任とは何でしょう?」と問いかける。人によって様々な答えが返ってくると思いますが、重要なのは自分語化できていることです。「成果を上げる」と「成長を促す」、「成功」と「成長」は似ているようで相反する面を持っています。前者を「目標の達成」と定義するなら、そのポイントは「適切な目標設定と計画準備、決断実行」となります。一方、後者を「知識/意識/能力の変化」と定義すると「適切な破壊と超回復」がポイントです。リーダーは成功と成長の両方を求めるものなので、正解はありません。重要なのは当事者として自分語化し、意思決定することです。

成長には「水平的成長(能力・スキル)」と「垂直的成長(人間性・器)」の2種類があります。水平的成長はスポーツでいうなら筋力や持久力なので分かりやすいですが、垂直的成長とはどんなものでしょうか? 我々は「批判や矛盾、曖昧さを受け入れ『物事の捉え方』を豊かに、より包括的、利他的、無防備になること」、と捉えています。例えば、失敗したことをポジティブに捉えることではなく、失敗は失敗としてネガティブな側面を保持する。優秀でありたい、という鎧を着た状態から無防備になる。不完全な部分を隠し通すことはできないのだから、ありのままの自分を受け入れ、すべてをみんなにさらけ出す。それが垂直的成長であり、多くの人を受け入れて行くリーダーに求められることだと考えます。

いわゆる「学び」には、新しい知識やスキルを獲得する「ラーン」と、大切な価値観・成功パターンなど獲得した栄光を捨て去る「アンラーン」の2種類があります。変わりゆく社会と価値観、激化する競争社会、停滞しがちな個と組織、立場や役割の変化。これらに対応するためには昔の自分を捨てることが必要です。当たり前のように染みついている価値観・偏見を手放し(アンラーン)、ちょっと違う考えを取り入れ(リラーン)、飛躍(ブレイクスルー)する。そんなアンラーンのサイクルを回すためには、もう一人の自分で自分を見つめる「メタ認知」が求められます。自分を信じると同時に、自分を疑う。少しずつ、連続的、非連動的に手放す時、あなたは無意識にアンラーンしているのです。

【PART2】 パネルディスカッション

[パネリスト]
株式会社チームボックス 代表取締役 中竹 竜二 氏
株式会社東光高岳 執行役員 人財育成センター長 野村 智志 氏

中竹氏
「我々がプログラムを進める中で、日増しに目の輝きが変わってくる方がいらっしゃると感じました。ご担当者としてお気づきの点があればお聞かせください。」

野村氏
「参加者に笑顔が見えたことに感動しました。プログラムは部長級を対象に実施したのですが、会社で部長級の方々の笑顔を見ることなどなかったので、楽しみながら学んでいることが伝わってきました。また、自分から考えを発信する人が増えたので、これもトレーニングの効果だと思っています。」

中竹氏
「プログラムの導入に対して、当初、全員がウェルカムではなかったと伺っています。」

野村氏
「その通りです。キックオフの段階では「今さらやっても仕方ない」「若手を育成したほうが効果的」など、斜に構えている人もいました。自分のスタイルを変えることが気持ち悪く、もがいている姿も感じられたし、アンケートに「勇気のいることだった」と回答した方もいらっしゃいます。でも、そんな人に限って成長したと思います。」

中竹氏
「我々のプログラムはすぐに成果が見えるものではなく、自分と向き合うものなので、御社のようにモノを作る仕事に従事してきた方々が戸惑うのは分かる気がします。」

野村氏
「自分たちで変わろうとしたというより、一つひとつのプログラムと実践を繰り返す中で自然と変わっていった、というのが正しい表現だと思います。」

中竹氏
「プログラムに参加されたのは、通常一緒に仕事をすることのない方々でした。そんな方々が定期的に顔を合わせ、悩みを共有するわけですから、そのこと自体にも価値があったのではないでしょうか。」

野村氏
「はい、それはとても価値があったと思います。例えば自分の悩みを吐露したときに、同じような悩みを持っている人がたくさんいることが分かり、それによって悩みを吐露できる環境がどんどん拡大していく。そんなイメージがありました。自分だけが悩んでいるわけではない、ということが心理的安全性を生んだのだと思います。」

中竹氏
「悩みを吐露しただけで解決するわけではありませんが、同じ悩みを共有できたという喜びは、皆さん感じていたようですね。
人事ご担当者として、野村様が大事にしている育成のポイントとはなんでしょう。」

野村氏
「例えば、ただ研修をやっても効果がないので、①事前課題をしっかり設定する ②それに対して研修・トレーニングを受ける ③事後課題として職場で必ず実践する。この3つが重要で、ワンセットになっているイメージです。
また、管理職以上になると事務局はほとんど手を出しません。自らやりなさい、というスタンスなのでリマインドはしない。「自分語化」にも通じることですが、自分から進んでやらないと結局他人事になってしまうので、その点は大事にしています。」

中竹氏
「シニアだからこそ、ですね。」

野村氏
「シニアといっても58〜59歳くらいです。弊社は60歳ですべての人が退職する訳ではないので、会社にいる以上は貢献してほしい。その意味では有意義な学びになったと思います。
たとえば、部長級の中にも毎日のように製造現場に足を運び、一人ひとりに声をかけている人もいますが、普通はなかなか現場に出ないし、話をする機会もありません。そこをもう一度学び直し、自分を捨ててやってみた、というのは良かったと思います。」

中竹氏
「トレーニングの参加者から「現場へ挨拶に行くようにしたら、それだけで半日終わってしまい、仕事にならない」という相談を受けたので、私は「それが仕事ですから、そのまま続けてください」とお伝えしました。確かに、仕事で成果を出さなければいけない、という発想はどこの企業にもありますよね。雑談に意味があるのか、サボっているように見える、価値を生みだしていない、等々。本人は思っていなくても、周囲からそう見られているのではないか、というプレッシャーを感じるのでしょう。」

野村氏
「そうだと思います。とくに部長級は、成果を承認されることがほとんどないので、トレーニングの中で中竹さんやトレーナーから承認されるだけで笑顔になる。素直にうれしいんだな、と感じました。」

中竹氏
「将来的には、部長級の方々同士が承認し合う流れができるといいですね。」

野村氏
「私の構想としては、全社の風土を変えることが目的の一つです。1回トレーニングを受けて終わりではなく、他の人たちを巻き込んで社内で学びの共通言語としてやっていく必要があると考えています。」

中竹氏
「同じ職位でも、ライン・マネージャーではない方がトレーニングを受けた場合、その先の仕事やタスクはどのように整備されるのでしょう。自分が変わったところでそれを活かすところがない、ということはありませんか。」

野村氏
「ライン・マネージャーではない方の中に、トレーニングを受けた後、自分から仕事を見つけた方がいらっしゃいました。その方は後継者育成に興味を持ったので、人を採用するために近くの高校に通って私たちの会社をPRする活動を行っています。自分で仕事を見つけて、自分で実行し、自分で満足しているイメージで、とても印象的な出来事です。」

中竹氏
「「輝く」というと「活躍して結果を出すこと」と考えがちですが、成果や成功はいろいろだと思います。御社の中では「成長」はどの程度フォーカスされましたか。」

野村氏
「2024年度の参加者のアンケートを見る限り、ほとんどの方が「成長した」と回答しており、「大きく成長した」と回答した方は6割以上でした。自分がこれまでやってきた仕事に対する考え方を改め、これまでと違うことを感じ取った、ということだと思います。」

中竹氏
「笑顔の裏で苦しんでいた方も多いのでしょうね。」

野村氏
「私は、人が苦しむのは成長の過程だと考えています。「腹落ちしないと成長しない」と言う方もいらっしゃいますが、私は腹落ちする必要はないと思っています。とにかく考動し、実践し、自分にフィードバックする。その繰り返しが成長につながるのであって、納得してから進むのではスピード感がありません。まず考えたことを行動に移すことが大事だと思っています。」

◎フォーラムを終えて

  • 参加者の意見・感想は・・・

    シニアに対する具体的アプローチや各層のマネージャーへの働きかけがとても参考になりました。 輝き続けるシニアのエッセンスを学ぶことができました。自身も高い当事者意識を持つよう頑張ります。 中竹さんのお話は体系だっていて学ぶところが多く、パネルディスカッションは実例の話がお伺い出来てより理解度が深まりました。 端的な説明で、ポイントは分かりやすかった。事例がもう少し共有されるとさらに良かったと思う。 東光高岳の事例は大変参考になりました。諦め感のある人が成長するという体験を弊社もしていきたい。 シニア層のアンラーニングにどう取り組むかは難しい。 70人の部長層に手をつけた東光高岳さんの決断に拍手を送りたい。 輝き続けるために、再度、自分を見つめなおすこと、それを自らの言葉で言語化する事を自分自身もやりたいと思います。
  • 登壇者の感想は・・・

    株式会社チームボックス 代表取締役 中竹 竜二 氏

    株式会社チームボックス 代表取締役 中竹 竜二 氏

    「輝き続ける本質は、積み重ねた経験を誇りにしながらも、そこに執着せず、新しい一歩を楽しむ「心のしなやかさ」にあります。今後、シニアに限らず、誰もが輝くことを楽しめる社会を共に実現しましょう。」
    株式会社東光高岳 執行役員 人財育成センター長 野村 智志 氏

    株式会社東光高岳 執行役員 人財育成センター長 野村 智志 氏

    「今回の弊社の事例は、企業文化の変革を目的として導入した研修で、シニア層が自ら成長し、組織が変わることを紹介しました。中竹さんとのディスカッションを通して、あらためて、いくつになっても人は成長できることを実感しました。」