ホームセミナーセミナーレポートダイバーシティ研究会 2021年10月12日

セミナーレポート

HUMAN CAPITAL2021パネルディスカッション

女性とシニア活躍の両側面から
人生100年時代 “マチュア世代女性”のキャリアを考える

日本生命保険相互会社 人材開発部 調査役 キャリア支援課長 原 光子 氏
三菱商事従業員組合 執行委員長 澁谷 はるな 氏
株式会社HIKIDASHI 代表取締役/昼スナックひきだしのママ 木下 紫乃 氏
株式会社Next Story 代表取締役 西村 美奈子氏
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 平田 麻莉 氏
株式会社パソナマスターズ 代表取締役社長 中田 光佐子
グロービス経営大学院 教員/ファカルティ本部 シニア・ファカルティ・ディレクター 林 恭子 氏

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日本経済新聞社と日経BPが主催し、3日間にわたって開催されたオンラインイベント「HUMAN CAPITAL2021」のプログラムの一環として、日本CHO協会では「ダイバーシティ研究会」の公開パネルディスカッションを開催しました。

冒頭、モデレータを勤めるグロービス経営大学院の林恭子氏より、女性とシニアの活躍を取り巻く状況が紹介されました。
昨年12月の本イベントで「シニア人材の活躍」をテーマに、パネルディスカッションを行いましたが、議論の対象は暗黙の内に男性になっていたこと、一方で日本企業のダイバーシティ推進の中心課題である「女性の活躍」では、育児と仕事の両立と、女性管理職候補の育成が主な議論のテーマであり、実質は40歳台前半くらいまでの女性が対象でした。
働くマチュア世代(40〜59歳)の約44%は実は女性であり、社会にとっても企業にとっても無視できない存在です。一方で、この世代にフォーカスが当たりにくいのは、働き方やキャリア志向、置かれたポジションが多様かつ複雑であるため、一般モデル化しにくく、働く女性本人ですらこれからの姿を見通しにくいためと林氏は分析、今回のパネルディスカッションでは、こうしたマチュア世代女性のキャリアについて、異なる立場の6人のパネリストがリアルに迫りました。

ディスカッションを通じて、各パネリストからは、以下のようなコメントがありました。

日本生命保険 原 光子 氏
マチュア世代女性は、ライフイベント等によって休暇や短時間勤務を経験した人が多く、自身の強みを認識できず、自己評価や自己肯定感、モチベーションが低い人が多い。日本生命では47歳を対象にキャリア研修を行い、ライフも併せたキャリアビジョンを描いてもらい、仕事に活かしている。キャリアを自分から考えられる人はまだまだ少ないため、こうした機会の支援をしていくことが重要だと考える。

三菱商事従業員組合 澁谷 はるな 氏
三菱商事ではマチュア世代女性のほとんどが一般職だが、この世代は時代の波や会社の制度変更に翻弄されてきた。また、身に付いたスキルに自信が持てず、セカンドキャリアに今の仕事がどう繋がるか見えていない人も多く、そのことについて声を上げづらいとも感じている。会社と組合が自己実現や新しい学びの機会を提供し、組織としてマチュア世代と一緒に悩み、成長していきたい。

HIKIDASHI 木下 紫乃 氏
マチュア世代女性の話を聞いていると、“寿退社”がまだおぼろげに残っている世代なので、会社での居心地が悪くなっていたり、褒められる機会やフィードバックが少ないことで、被害者意識を持っている方も多い。私が開いている“昼スナック”を含め、自分とは違う人と触れ合う場に出ることで、本人も自覚していなかった、その人の強みや持ち味が顕在化してくることもある。一歩踏み出すことが難しければ、半歩でもいいので、昨日と違うことを是非やってみてほしい。

Next Story 西村 美奈子 氏
均等法第1世代は働き方が整備されておらず、多くの女性が犠牲を払って働き続けてきた。また、横のネットワークも少なく、相談できずに不安を抱えている。こうした人たちには、同じようにキャリアに悩みながらも進んできた他の女性たちから、アドバイスや情報をもらえる場、研修やコミュニティなどのサードプレイスが大切。1ミリでもいいから前に進もうという具体的な行動を取ることで、得られる気付きもある。

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 平田 麻莉 氏
フリーランス=若い人というイメージを持たれがちだが、実は50代も増えている。現代は「個の時代」と言われ、一人ひとりが特別な何者かにならなければという思いが強く、「私なんて」と思いがち。今まで当たり前にやってきたことが、一歩外に出ると実は重宝されるということも知ってほしい。会社や家庭以外に、サードプレイスのような場を持ち、そこから世界が少しでも拡がれば、人生を豊かにし、多角的な視点で次のキャリアを考えられるようになると思う。

パソナマスターズ 中田 光佐子
自己肯定感の低さや被害者意識は、女性だけでなく男性にもあり、企業や社会との関係における深い課題と捉えている。マインドセット研修やスキルアップ、リカレント教育などの機会を通じて、自身の持つ強みやスキルに気付いてほしい。セカンドキャリアは人と比べるものではなく、自分の価値観から築いていくものであり、企業はそうしたことに気付けるように支援・準備をすることで、ロイヤリティ向上に結びつけてほしい。

◎研究会を終えて

以下の2点は、参加者の皆様が当日の日経のアンケートにお答え頂いた結果からの抜粋です。

  • Q1.今回のパネルディスカッションに対する満足度をお聞かせください。

    グラフ

    Q2.今回のパネルディスカッションは参考になりましたか。

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    とても参考になった。日本の企業はシニア(マチュア)世代の活用が不十分だ。雇用が65歳までに延長されたから、企業として働く機会を作っただけで、シニア(マチュア)の能力を引き延ばそうと考えてないのが残念な実態。せっかく働くのだから、働き甲斐を感じたい 多彩なパネリストによる、とても興味深い内容だった。当社でも、社外の方との交流の場を何か作ることが出来たら良いなと感じた とても印象に残る、勉強になるセミナーだった。正直「マチュア世代」という用語自体を知らなかった。ましてやセカンドキャリアなんて考えたこともなかったが、思わず、昼スナックママ木下さんの『45歳からのやりたくないことをやめる勇気』という本を買ってしまった(笑) 雇用機会均等法の初期世代の苦悩は、同性からも忘れ去られ、静かに定年時期を迎えようとしている。今後も是非、フォーカスを当ててほしい 皆様のお話を聞いていて、女性は様々な人生の選択肢を経て、今に至っているので、人それぞれのキャリアがあり、なかなかロールモデルを見つけるのが難しいなと思った。「キラキラキャリア」ではない、その他多くの女性がこれから路頭に迷わないように何が出来るのか、考えていきたい 今回のセミナーは非常に役立った。定年を目の前にして、漠然とこの後どうしたらいいのだろうと思っている。ちょうど我々の世代は日本において女性が男性と同じように働いて定年まで到達する最初の世代になる。定年後の男性に関しては書籍や地域の講演会などいろいろとあるが、どれもピンとこないため、途方にくれていた。今回のパネルディスカッションは、まさにこんな悩める私にピッタリのもので、私らしく定年後を過ごすヒントを頂いた気がした。今後もこのようなセミナーを開催して頂けるとうれしい。また、定年後に働くという選択肢だけでなく、学ぶ、ボランティア活動を行うなど他の事例も紹介して頂けると、より広い範囲から考えることができそうだ 「マチュア世代には、なかなかスポットが当たることがなかった」と言われ、確かにそうだなと感じた同世代の自分がいた。既にそれなりのキャリアを積み、一人前の社会人としてほぼ出来上がっている中で「これからのキャリアを考えさせる」のも、たやすいことではないが、人生100年時代を生き抜いていくには、小さなことからで構わないので、今までとは違う新しい自分を作っていかなければならない、ということを伝え、且つサポートすることが必要だと認識した 紹介されたマチュア世代への不満は、まさに“あるある”だと思った。若手に先を越されてしまう、できて当たりまえ=褒められない≒自己肯定感低下など。この事実をどう受け入れ、どう次への意欲にするために、昇格以外に何が必要なのか。世の中はジョブ型になっていくと言われているが、まだまだ“フォルダ型で#タグ型”では、頭でわかっても、心の底からの満足は難しいのではないか。 女性のキャリア形成とその実現は、本人の志向・意欲だけではどうにもならないことがあると思う。女性本人の意志だけでなく、企業側の意志も重要になる。日本企業が女性という視点を取り入れて発展していくために必要なことや成功事例、また、視点を取り入れない場合に、どのようなデメリットが企業側に返ってくると予想されるか、定性的・定量的な視点から、またお話を伺う機会があると良い 40代〜50代の女性は、キャリアを築けた人と、これからもまだ働けるのに・・・という人に分かれてしまうと感じていた。今回のセミナーは、いろいろな働き方や情報を得られたし、共感できる事が多かった。今後は副業や起業など、いろいろな働き方をしている人の話や、女性活躍、フェムテック(Female×Technology)への関心が高まる中、男性はどう感じてるのか、などを聴いてみたい マチュア女性のキャリアに関する話をなかなか聞く機会がないので、大変参考になった。引き続き当事者のお話や、企業としてどういう取り組みがあるか、具体的にどういうキャリアを歩んでいるか等、今後またお話を聴けるとありがたい
  • 登壇者の感想は・・・

    日本生命保険 原 光子 氏

    日本生命保険 原 光子 氏

    「皆さまのお話を伺い、組織を支えている事務を担うマチャア世代の方々には、これまでのキャリアを振り返る機会を持ち、ご自分のキャリアに自信を持ってほしいと改めて感じています。ご自分の強みやスキルを認識できたら、自己肯定感は上がりますし、キャリアビジョンが描けたら、その実現に向けて、仕事への向き合い方も変わることでしょう。外の世界を覗きながら、定年後も合わせた“トータルの人生”のビジョンを描く。そして、実現に向けて一歩を踏み出していただきたいですね。しかしながら、自らキャリアについて考える機会は多くなく難しいものです。企業の方には、ご自身のキャリアと向き合える機会など、キャリア支援をご検討頂けたらと思います」
    三菱商事従業員組合 澁谷 はるな 氏

    三菱商事従業員組合 澁谷 はるな 氏

    「セミナーをご視聴頂き、ありがとうございました。私自身も今回登壇させて頂き、現在のマチュア世代の女性たちは、男女雇用機会均等法などの社会情勢や会社の人事制度に翻弄され、激動の時代を生き抜いてこられた世代なのだと改めて認識しました。そして今、“人生100年時代”という新しい時代の中で、自己実現の機会やセカンドキャリアの在り方を模索し、時代を切り拓いていこうとされています。これまで会社や社会に精一杯貢献してこられたマチュア世代の方々を、今度は会社や社会が応援する番です。私たちも組合という立場で何ができるのか、当事者の声も大事にしながら考えていこうと思います」
    HIKIDASHI 木下 紫乃 氏

    HIKIDASHI 木下 紫乃 氏

    「ご参加ありがとうございます。ひとつでもヒントを持って帰っていただけていたら、うれしいです。世界はますます大きく変化していきます。ジェンダーや年代、バックグラウンドの違い等を、言い訳や諦めの材料にするのではなく、「持ち味」と捉え、様々な挑戦をしていきましょうよ。私は、ミドルエイジの女性には、これからの世界を善きものに変えるためのパワーがあると信じています。若い頃には見えなかったことが見え始める世代であり、周りに忖度しすぎずにしっかり発言していけるのが私達の強みです。自信をもって、自分がやってみたいこと、良いと思うことに挑戦してみてください。仲間は沢山いますよ!もし疲れたときはぜひ“昼スナ”に!」
    Next Story 西村 美奈子 氏

    Next Story 西村 美奈子 氏

    「悩んでいるのはあなただけじゃない。みんな悩んでいます。でも必ず自分の道が見つかると信じて、ぜひ具体的な行動に移してください。「書店で気になる分野の本を手に取る」から始めるのでもOKです。動けば何かが見えてきます。違っていても気付くことができる。気付いたら方向転換すればいいだけのこと。答えはすぐには見つかりません。紆余曲折もあるでしょう。だからこそ1日でも早く行動に移し、1ミリでも前へ進んで行きましょう。セカンドキャリアはいろいろな可能性があります。大丈夫!自信をもって!」
    プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 平田 麻莉 氏

    プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 平田 麻莉 氏

    「子育てが一段落して、これからは自分の人生を生きたくて」「親の介護と両立できる働き方を模索して」「ガラスの天井があるので」など、理由は様々ですが、セカンドキャリアとしてフリーランスや副業に関心を持つ女性が今、増えています。特別な資格や営業力がなくても、これまでお勤めされてきた経験を糧に、自分のペースで、フリーで働ける環境が整ってきているからです。企業人事の視点で言えば、定年を待たず、50代前半のうちから副業を解禁するなどして、自律支援に取り組むことが、従業員のセカンドキャリアの選択肢を拡げます。自律してイキイキ働く50代が増えれば、会社全体も活性化し、若手にも良い影響が生まれるのではないでしょうか」
    パソナマスターズ 中田 光佐子

    パソナマスターズ 中田 光佐子

    「今回、皆様とともに、改めて“マチュア世代女性の活躍”にフォーカスした事で、また一歩前に進んだように感じます。人生の第2ステージであるマチュア世代には、他者との比較ではなく、自分にとっての価値観や豊かさに合ったキャリアづくりが大切です。そのためには、まず自分自身を良く知る事から少しスタートしてみましょう。一方、企業や社会が、そういった機会を多くつくる事で、自信を持って人生に向き合えるマチュア世代が溢れ、更に日本が元気になっていくと思います。風の時代に入った今、まさに楽しく、しなやかに生きていく事が得意な、マチュア世代の時代ではないでしょうか。これからも、そんな皆様の活躍を心より応援してまいります。貴重な機会を頂き、ありがとうございました」
    グロービス経営大学院 林 恭子 氏

    グロービス経営大学院 林 恭子 氏

    「マチュア世代女性本人も、周囲も、「どうせ私には大したことはできない…」「あの人を刺激しない方が良い...」といったアンコンシャスバイアスを捨て、互いにポジティブなキャリア展望を持つことが大事だとつくづく思いました。また、良い意味で好奇心を持って新しいことを学んだり、新しい経験にチャレンジしてみると、自分に自信がついたり、新しいネットワークが広がり、ポジティブなキャリア展望にもつながると思います。今は、ネットを上手に活用することで、色々なことが学べたり、新しい体験ができたりする時代です。個人も企業も、「案ずるより産むが易し」の精神で、まずは具体的な行動をとり始めることをお勧めします」