ホームセミナーセミナーレポートダイバーシティ研究会 2022年2月9日開催

セミナーレポート

ダイバーシティ研究会

ワーク&ライフ・インターンの活用
~自らのライフとキャリアをデザインしたいZ世代のリテンション~

スリール株式会社 代表取締役 堀江 敦子 氏
スリール株式会社 プログラムコーディネーター(京都府事業担当) 戎 多麻枝 氏

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1990年代後半から2000年代生まれの「Z世代」は、生まれた頃からインターネットが身近にあった「デジタルネイティブ」といわれます。ワークinライフを重視する彼らと、従来どおりの人生観や仕事観を優先する企業との間で、ライフ&キャリアデザインに対する考え方や価値観の相違が拡がる中、企業にはZ世代の考え方をしっかりと理解した上で、採用や人材開発を行うことが求められています。

今回のダイバーシティ研究会は、スリール(株)の堀江敦子、戎多麻枝の両氏のレクチャーに、同社が企画・運営する「ワーク&ライフ・インターン」に参加した学生の生の声や参加者同士のグループ情報交換も挟みながら、企業のZ世代への向き合い方について掘り下げました。

自分らしいワーク&ライフの実現を目指し、女性活躍をはじめとしたサスティナブル経営の支援を行っているスリール(株)では、学生・若手社員・管理職などを対象とした、仕事と子育ての両立体験プログラムを実施しています。行政からの依頼を受けて大学の中で実施している「ワーク&ライフ・インターン」は、学生が実際に共働き家庭に赴き、「仕事と子育ての両立」のリアルを体験することが特徴のプログラムです。
冒頭、堀江氏はこのプログラムの特徴と実施状況を紹介。続いて、小グループに分かれて「Z世代の採用・定着について、どういうことで悩んでいますか?」というテーマでディスカッションを行いました。ディスカッションからは「終身雇用を前提とする会社もあれば、中途採用が中心の会社もあり、取り組み方は様々。今後はZ世代に限らず、多様な働き方に注力していきたい」といった声が報告されました。
これを受けて堀江氏は「人々の就業意識は、社会状況に大きな影響を受ける」という話題からレクチャーをスタートしました。特に2000年代入社以降の若者の意識変化は顕著で、「仕事だけが人生ではない」「長時間働く会社はサスティナブルではない」と考える人が増加。学生を対象に行ったアンケートでも、「『収入や出世』より『個人の生活と仕事』を両立させたい」「楽しく働きたい」と考える層が多数を占めていることから、学生・若手は「ワーク&ライフバランス報酬」を求めていることがわかります。そしてその理想を実現するためには、会社の制度だけではなく、「職場の風土」や「日々の仕事の効率化」など、自助努力が必要だとも認識しています。そのため、やりたい仕事のできる会社に入社したとしても、残業が多く、仕事と子育てを両立している先輩がいない環境では、73.8%が「30歳以降で転職していると思う」と回答しています。アンケートからは、多くの女性が「現在の仕事に充実感があり、マネージメントへの意欲がある」と回答する一方で、その大半が「仕事と子育ての両立への不安があったら、転職や退職を考えてしまう」というもう一方の現実も浮かび上がっています。
ここで堀江氏は、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグの理論を引用。人が満足を感じる「動機づけ要因」と不満足を感じる「衛生要因」は同じではないため、給料を上げればモチベーションが上がるわけではなく、魅力的な会社となるためには「働きやすさ」と「やりがい」の両方が揃っていることが重要だと訴えました。しかしながら、就労条件や報酬条件などの「働きやすさ」が目に見えやすいのに対して、仕事に対するモチベーションなどの「やりがい」は目に見えにくいとされます。企業に求められるのは、制度を整えることだけでなく、それが実際に活用され、社員のライフキャリアがリアルに感じられる風土を醸成することです。具体的には「半径25m以内に、仕事と子育てを両立し、気軽に話せる先輩がいる」と感じられる環境がたいへん重要であり、育児があってもキャリアアップできるよう、上司と部下で共に考えることが重要です。

次に戎氏から、京都府が学生を対象に実施している「仕事と育児の両立体験プログラム」と、その成果などが紹介されました。
2017年にスタートした、1ヶ月半にわたる長期プログラムでは、学生が仕事と子育てを両立中の家庭にお邪魔して、保育園のお迎えや食事の支度など「両立」のリアルを体験。その上で、これをとりまく社会課題の解決について考え、プレゼンテーションを行います。このプログラムに加え、2019年からは1日4時間に凝縮した短期プログラムもスタートしたところ、2021年度の参加者は450人を超えました。
次に、実際に長期プログラムに参加した2名の男子学生がゲストとして登壇、実際の学びと率直な感想を報告しました。
「仕事と育児を両立することは難しいと感じましたが、子供の成長はその大変さを吹き飛ばしてくれる、ということも感じました。企業が子育てを支援することは、長期的な視点に立ったときに『社会貢献』になると思います」
「両立には大変な部分もあるけれど、両立してこそ得られる経験値があると実感しました。将来は自分が職場のロールモデルとなれたら、思っています」
現役大学生のリアルな声に対する質疑応答に続き、再び小グループに分かれてディスカッションを実施。「Z世代の採用」をテーマに、現場が抱える課題とリアルな声などを共有しました。

最後は再び堀江氏が登壇、「これまで企業は、仕組みを作って終身雇用することを重視してきましたが、社会の変化に合わせて会社にも変化が求められています。働きやすい制度や風土の醸成には時間がかかるので、早く着手するほど組織の変革が上手くいくことは間違いありません。外部の力も借りながら、変革していくことが大切です」と締めくくりました。

◎研究会を終えて

  • 研究会の内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    これから就職活動を始める学生さんが、企業に対して何を求めているのかという生の声や、大変貴重なコメントを貰えたので、参考にさせて頂きたい 若い世代の男性が、育児との両立をしたいと考えているのが、新鮮に感じた 学生のリアルな声を聴け、大変参考になった 学生の生の力強いコメントが印象的だった。同じ社会を生きているが、見ている景色に違いがあることについて学び、気付かされることが多くあった テーマが、育児・介護との両立面に偏っていたように感じたが、彼らのキャリア観等、企業側に必要な変革についての情報やヒントも、もう少し欲しかった。また、参加する学生も、京都の方だけでなく、東京出身者、地方出身者等のバリエーションがあると、もっと良かったのでは 大学でのキャリア教育でも、ダイバーシティ&インクルージョンは、とても重要な点であると認識しているので、本日の内容を学内に持ち帰らせて頂き、今後の具体的なアクションに繋げていきたい
  • 登壇者の感想は・・・

    スリール株式会社 堀江 敦子 氏

    スリール株式会社 堀江 敦子 氏

    「セミナーでは、社会の変化に伴う働き方の変化と、プライベートも含めた長期的なキャリア形成の環境作りが重要となることをお話しさせていただきました。ディスカッションでは、新卒採用にとどまらず、ダイバーシティを意識した社内の人材育成といった、より本質的な議論をして頂き、嬉しく思っております。ありがとうございました」
    スリール株式会社 戎 多麻枝 氏

    スリール株式会社 戎 多麻枝 氏

    「ワーク&ライフ・インターンを体験した学生が体験談をお話する機会をいただきました。「社員の働き方(ワーク)や仕事以外の生活(ライフ)が見えるからこそ、その会社で働く姿がイメージでき、チャレンジしたいと思える」という、あたりまえすぎて、ついつい忘れてしまいがちな学生視点を伺い、D&Iの重要性を再確認することができました」