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セミナーレポート

オンライン公開講座

人的資本経営のリアルと本音
〜エンゲージメント向上が企業文化醸成の鍵!〜

フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長 竹村 富士徳 氏

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「人的資本経営の実践と開示の初年度」である2023年も既に半年が経過し、様々な企業がこの人的資本経営に取り組む中で、多くの企業に共通する課題や、各社各様の課題が少しずつ浮き彫りになって来たのではないでしょうか。
今回の公開講座では、数多くの企業の組織変革を支援されてきたフランクリン・コヴィー・ジャパンの竹村副社長をお招きし、同社が実施した調査結果をもとに、人的資本経営のリアルと本音に迫り、企業文化醸成へのロードマップや処方箋についてお話いただきました。以下は講演の要旨です。

「人的資本経営」というラベルが貼られる以前から、多くの企業が雇用の保証や福利厚生の充実等に取り組んで来ました。人材を大切にすることと「理念・パーパス(存在意義)」や「中期経営計画」と人事機能とを戦略的に繋ぎ合わせてマネジメントしようとしている点、つまり具体的な施策や仕組みに落とし込み運用していこうとしている点が、近年の大きな特徴です。
多くの企業が人的資本情報の開示に取り組む一方で、(一般社団法人生命保険協会の調査によると)“投資・財務戦略の重要項目は?”との問いに対し、投資家は「人材投資」を、企業は「設備投資」を重視しているという結果が明らかとなりました。このことからも投資家が求めているものと、企業が見ている世界とが逆転しており、それ故に人的資本経営に歪みが生じていると言えるのではないでしょうか。当社が提唱する7つの習慣の『See-Do-Get』サイクル(※)に基づくと、以下のように表すことが出来ます。
※『See-Do-Get』サイクルとは?: 望む結果を得る(Get)には、行動(Do)を変えていく必要があり、その行動を変えるにはパラダイム(See)を変えることが不可欠であるという概念。
・See: 無形資産の市場価値の割合が増加し、内閣府令の施行により有価証券報告書における開示義務が決定
・Do: HRに関して、採用・配置よりも教育・評価を重視
・Get: それにより、ISO30414ガイドラインに示されるような開示項目を高めていくことが可能となる

しかしながら、伊藤レポートを発表した一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏が『とにかく数値を開示すれば良いというわけではない。リスキリングのための学習時間を増やしているとか、単純に女性の管理職比率などの数字を高めているだけでは意味がない。大事なのは哲学。当社はどのような価値観を持ち、人材のどういう側面を大事にし、会社でどのような体験をしてもらい、人材にどのように活躍してもらい、それらを通して人材価値と企業価値をいかに連動させていくのか、というストーリーを描けているかが今、求められている』と警鐘を鳴らすように、実際に多くの企業では、開示義務が先行し中心になってしまい、人的資本経営の本質(哲学)の部分が見えていないのではないかと懸念しています。
当社で実施した「人的資本経営の取り組みに関するリアルと本音」の実態調査では、「人的資本経営」に取り組むことは重要だと考えつつも、約9割以上の方が何らかの不安を感じていることが分かりました。リアルな声としても、「現場には意識が浸透していない」「現場感が持ちづらく、後回しになりがち」「人的資本経営=人的資本開示のようだ」など、手段と目的が逆転してしまっている実態が浮き彫りになっています。このことからも“なぜ取り組むのか”というストーリーや背景を明確にし、それを浸透させることが非常に重要だと言えます。また同調査から、「人材育成」と「エンゲージメント」に関しては、多くの企業が開示予定項目以上に、取り組み必須項目と捉えていることも明らかとなりました。

人的資本の本質は、以下のSee-Do-Getサイクルで表すことが可能です。
・See: 人を経営上の最も重要な「資本」と捉える/継続性な経営目的の実現と企業価値の向上が目的であることをしっかりと把握する
・Do: 様々な施策や取り組みにおいて「行動変容」と「エンゲージメント」が最も重要である
・Get: 独自の貢献・継続的成長・顧客ロイヤリティ・社員エンゲージメントの4つが揃って初めて持続的成長が得られる

私たちは「行動変容」と「エンゲージメント」によって企業文化が醸成されると考えており、人的資本経営においてこの2点は決して欠かすことの出来ない最重要コンセプトです。
「行動変容」を組織単位で行うためには、開始・傾向・増加・拡大の4段階があり、最終的に拡大のレベルまで到達することで、集団性と持続性が担保され、新たな文化が醸成されます。しかしながら実際は、1番目の開始の段階に留まっている企業が多いように見受けられます。
また同時に、組織に関わる方々の「エンゲージメント」がないことには、行動変容の集団性と持続性は担保されません。これらの「行動変容」と「エンゲージメント」をどのように捉え、どのようにアプローチしていくことで、本質的な人的資本経営が可能となるかについて、本日は紹介させていただきます。

まず、本質的な変化へのアプローチとして、以下の4点が欠かせない原則です。

① インサイド・アウト
変化の激しい現代において持続的な成長をしていくためには、“リーダーシップ”に関わる原則として次の3項目が重要です。
1)個人レベル: 自立と協働(主体性&シナジー)
2)チームレベル: エンパワーメント(指示型から委任型へ)
3)組織レベル: アライメント(フォーカス&エナジー)
まずは個人が、次にチームが、そして組織が変わっていくという「インサイド・アウト」のアプローチでない限り、本質的な変化を起こすことは難しいでしょう。

② マインド醸成
マインド(人格面)とスキル(能力面)は、効果性を発揮し信頼性の高い個人とリーダーに必要な要素です。しかし、どれほど高度なスキル面を持ち合わせていても、その“根”となるマインドがしっかりと根付いていなければ、その高度なスキル面の発揮は制限されてしまいます。「行動変容」や「エンゲージメント」を考える際には、まずは“根”の部分であるRe-mind-ingを大切にしていきましょう。

③ パラダイム
本質的・長期的な変化を望むのであれば、ものの見方“パラダイム”を変えなければなりません。「当たり前」の奥にあるパラダイムを理解することで、自らの思考・行動を根本的に変容するアプローチを取ることが可能となります。

④ 文化醸成
知識から行動、その継続性によって個人の「習慣化」、そしてその集団による新たな「文化」醸成まで及ぶと、ビジネスの結果に継続的なインパクトをもたらします。そのためには、時間軸のプロセス化と組織階層が重要であり、2:6:2の中間層をどのようにトップ2割層へと動かしていくのかが肝であると言えるでしょう(Move the Middle)。

これらのことが機能して初めて「行動変容」が確実なものとなり、その中で「エンゲージメント」も醸成されていくと考えています。これらの原則を活用しながら、持続的な成長を得るためにどのように「行動変容」と「エンゲージメント」を高めていくのかについて、2つのパラダイムを紹介します。

1.企業価値向上やサステナビリティ経営に向けた、ソフト・ハード両面(社会的意義+財務的成功)の達成の継続性

経営のソフト・ハード両面を達成するためには、事業戦略・組織開発・人材育成が必要であり、更にこの3点それぞれのソフト・ハード両面をバランス良く埋めていくことが重要です。

2.バイヤータイプの概念

1.0: 講座実施 = スキル及びマインド研修の箱型企画
2.0: 行動変容 = 思考・行動パターンの習慣化及び文化醸成
3.0: 目標達成 = ビジネス結果達成に向けての戦略実行

当社では顧客ニーズを上記3タイプに分け、各々のタイプの目的により手段を変えたアプローチにてご支援しています。どのような価値観を持ち、人材のどのような側面を大切にし、企業でどのような体験をしてもらい、人材にどのように活躍してもらうか。そして、それらを通して人材価値と企業価値をいかに連動させていくのか、というストーリーを描けていることが重要です。特に3.0をめざす場合には、エンゲージメントを高めない限り、戦略は実行不可能であり、インサイド・アウト(内発的動機付け)によって、エンゲージメントを本質的に高めていくことが出来ると考えています。
リクルートマネジメントソリューションズ社の「ワーク・エンゲージメントが仕事のパフォーマンスに与える影響」という論文によると、マネジャーの関与の程度がエンゲージメント自体を高めるものではなかったという結果が見られました。マネジメントの役割としては、メンバーがエンゲージメントを高めたときに、それをパフォーマンスの向上に結び付かせることが重要であると示唆されています。そして実践的には、仕事を担当するメンバー本人にとっての創意工夫の余地を残し、メンバーの自己決定感を高めながら、エンゲージメントを向上させ、それをパフォーマンスへの接続ができるマネジメント手法が効果的であると記されています。

私たちは、エンゲージメントを高めていく1番の動機は、「意義ある貢献」ではないかと考えています。前提条件として、エンゲージメントの高い人は「意義ある貢献」を動機・目的とし、「意義ある貢献」は、トップリーダーの概念化能力と戦略思考によって生み出されます。その上で、日常業務にて貢献への結果を見続けなければ、エンゲージメントは定着せず、文化を醸成するためには集団化と持続性が担保されなければならないのです。
今回ご紹介した「行動変容」「エンゲージメント」をどのように捉え進めていくのかという観点や、本質的な変化へのアプローチの4原則が、皆様の企業での取り組みの参考になれば幸いです。

◎公開講座を終えて

  • 公開講座の内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    今まで如何にDoばかり考えていたかを痛感した。「意義ある貢献が日々できているか」という問いに、エンゲージメント向上の糸口を見た気がする。 マネジャーの役割は、エンゲージメントを上げることではなく、エンゲージメントが上がった時に如何にパフォーマンスに繋げるかであるという視点は、目から鱗だった。 「哲学」は、それぞれの人の背景に左右されがちである。なかなかお互いが考えていることを理解することは難しいと思う。また、スキルとマインド、外発的動機づけと内発的動機づけ等、数値化するのが難しいものほど、本来重要なものなのではないかと改めて思った。 人材開発部門に在籍しているので、3.0と言われたところを目指しているが、そもそも幹部社員の中で経営戦略からの落とし込みができていないため、残念ながら2.0に止まっている。来年度は当社も今回の講演で示唆していただいた形で進めていけたらと思う。 従業員エンゲージメントが大切と言いながら、情報開示への対応が先行し、本当に魂の入った施策が打てていないという感触を持っていたため、本日いただいたヒントを参考に考え直してみたい。 エンゲージメントサーベイは仮説の読み解きが大事であること、そして自社にとって本質的なエンゲージメントとは何かをじっくり考えることの大切さを知ることができ、非常に有意義だった。エンゲージメントサーベイ実施後、外部コンサルタントが作成した腹落ち感のないレポートに困惑していたが、まずは自分たちでもう一度頭を使って考えてみようと思う。 エンゲージメントはアウトサイドインであることに驚き、これを認識しないと間違った方向にいってしまうことに気を付けたいと思った。ES(従業員満足度)とエンゲージメントとは違うことを理解することが大事であることを改めて認識し整理しないといけないとも感じた。 「エンゲージメント」が当社(当社人事部というレベルかもしれない)のテーマとなっているが、inside-outやcontextなど、参考となるキーワードや考え方をお聴きする事ができた。 成長を続けている当社だが、オンラインビジネスの手数料無料化を進める中、法人系ビジネスの本格的な成長が必要となっている。今まではビジネスモデル自体で成長出来ていたが、今後は人による成長が不可欠である。一方で、今でもベンチャースピリッツを大切にし、強力なトップダウン経営が継続している中、社員エンゲージメントは決して高くなく、今後の大きな課題と認識している。チャレンジは続くが、本研修に色々なヒントが含まれていたように思う。 竹村氏の講演を数回視聴したが、今回のセミナーは最高に参考になった。特に「意義ある貢献」という意味が印象的だった。 前職で「7つの習慣」の研修を受けた際、今回と同じようにインサイド・アウトが根本的に重要であることを理解していたので、今回のセミナーは懐かしくも納得いくものだった。エンゲージメントを高め、組織風土を改善醸成していくためには、インサイド・アウトの意味・意義を理解し、トップから会社全体で内省化し、自立した人材集団にしていくことが重要だと、あらためて考える機会となった。 人的資本開示に取り組む前提として重要な視点をわかりやすくご教授いただいた。7つの習慣を受講してからだいぶ経っているため、改めて今の自身の役割に照らし併せ、まずはマインドセットし直さなければと思った。「意義ある貢献」という言葉が特に印象的だった。
  • 登壇者の感想は・・・

    フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 竹村 富士徳 氏

    フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 竹村 富士徳 氏

    「『7つの習慣』著者のコヴィー博士は常々「パラダイムについて語らな過ぎ」と語っていました。個人であれ、組織であれ、国家レベルであったとしても、本質を捉え変化を促すためには、パラダイムが起点であり、経営施策や人事施策にしろ同様です。本質を捉え、組織変革を成し遂げたいリーダーの支援を私たちは喜んでやらせていただきます」