ホームセミナーセミナーレポートダイバーシティ研究会 2020年10月13日開催

セミナーレポート

ダイバーシティ研究会

男性の育児休業や仕事と家庭の両立は、生産性向上に不可欠!
〜「With コロナ」の働き方の変化が加速した今、企業に求められる対策は?〜

株式会社子育て支援 代表取締役 熊野 英一 氏

このセミナーの案内を見る 男性の「育児休業」と「仕事と家庭の両立支援」に関するアンケート結果を見る

「Withコロナ」環境下でのリモートワークの増加に伴い、働き方や社員の意識が大きく変化しています。今回のダイバー研究会は、㈱子育て支援の熊野 英一代表取締役と共に、男性社員の仕事と家庭・育児との関わり方や、仕事と育児の両立に対する意識の変化を踏まえて、これからのライフ&ワークサポートのあり方を参加者の皆さんと共に考える機会としました。

以下、熊野氏の講演の要旨をお伝えします。

■諸悪の根源は、男性の長時間労働

冒頭の「休みを増やして、生産性は向上するのか?」という問いに対し、「はい、向上します。しかし乗り越えるべき『カベ』があります」と明確に回答した熊野氏は、人口減少が止まらず、労働人口が減る一方の日本において、いかに少ないインプットで今のアウトプットを維持し、Well-Beingを目指すのか、それには諸悪の根源である男性の長時間労働を是正する必要があること。また、最新の統計では、男性新入社員の約8割が「育児休暇を取得したい」と希望しているにもかかわらず、取得出来ていないこと。その最も重要な理由として、職場に「育児休暇を取りづらい雰囲気」が存在することが、この問題の本質であると指摘されました。

■男性の育児休業の取得を阻む、7つの『カベ』

共働き世代は急増し、男女間における家事の役割分担の意識には変化があると、様々な統計データからは読み取れるが、実際には女性に育児・家事の分担が偏っているのが現状。その理由は、男性の長時間労働を前提として、会社の組織運営と家庭における役割分担がなされていることを見直すことが急務であり、そのためには男性の育児休業の取得を阻む7つの『カベ』をまず知ることだと指摘されました。

7つのカベとは、
1)育休で収入がなくなったら、生活が立ち行かない(収入のカベ)
2)男性が育休を取っても、家庭でやれることは少ない(育児・家事スキルのカベ)
3)共働きの家庭でないと、育休は取れない(法律・制度のカベ①)
4)大企業しか男性育休の制度はない(法律・制度のカベ②)
5)給付金をもらうと、会社に金銭的負担をかける(法律・制度のカベ③)
6)1年間も休んだら、職場の仕事が回らなくなる(業務のカベ①)
7)一時的にせよ、担当業務を引き継ぐと、会社に迷惑がかかる(業務のカベ②)

こうした7つのカベは正しく周知・認識されておらず、「法律の制度上、専業主婦の家庭でも夫は育休取得できる」ことや「男性もしっかりトレーニングすれば、家事はできる」ことなど、謎の「誤解」「思い込み」や「空気」を取り除けば、解決できるものが多いのです。

■まずは2週間、目標は1か月

男性の育休取得が増えれば生産性が上がるのではなく、男性が育休を取れるような職場環境を整えることができれば、あらゆる制約のある社員の「働きやすさ」が改善し、生産性の向上に繋がり、そして企業イメージは向上します。それには、まずは2週間、男性が育休を取れるようにすることから始めてみましょう。

以上のように、熊野氏の豊富なコンサル経験と適切なエビデンスに基づく示唆は、人事担当者が本施策を推し進めるための重要な情報源となりました。講演の随所での熊野氏からの問いかけに対し、参加者が感じる想いを忌憚なくチャットにて共有し、意見交換を実施した今回の研究会は、改めて「みんながやれば、日本が変わる」と、多くの共感と気づきを得る貴重な機会となりました。

◎研究会を終えて

  • 研究会の内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    男性の育休取得や育児参画に対して、何から着手していかなければならないか迷いがあったが、本日のヒントで、制度やルールの周知徹底から始めようと思う。男性育休取得や育児参画は、社会全体の課題であり、一緒に協力し合って進めていくことで、社員ひとりひとりの生きがいにつながるだけでなく、社会全体にも良い影響を与えるという、新たな視野が拡がった。 どなたかのチャットにもあったが、コロナ禍で在宅勤務が進んでいる、また外出や遠出がまだまだコロナ禍前には戻らない中で(有休すら取らず)敢えて育児休暇を取得しようとする社員が、弊社のアンケート結果でも減少している。 プレミアムフライデーが流行った時も、かなり強制的に帰社させていたが、時が経過すると当たり前のように、週末、月末の金曜日はみんな早めに帰宅するようになったのは事実で、強制から初めてそれを風土に変えていくというアプローチは納得できた。 「コロナに感染したら2週間以上休ませるのに、育休ではなぜ休めないのか」という言葉にハッとし、まずは1か月からという可能な範囲からの目標設定も参考になった コロナで休むのになぜ育休は取れないのか?は本当にその通りだと思った。BCPの一環でもあることは社内に広げていきたい。また、育休を取る人だけでなく、穴を埋めた周囲に対してのフォローがないと、育休を取る雰囲気も生まれにくいかなと思う。現在は現場に丸投げなので、会社として何かフォローできると良いのだが、なかなか良い案が思い浮かばない 社内の説得材料になる根拠資料を紹介してもらったので良かった。男性育休取得の意味を腹落ちさせることが推進側として非常に難しいのが現状だ データなどをたくさん提示してもらい、説得力のある内容だった。あとは自社内での展開を具体的にどのように行うかが課題だ やはり、男性が育休を取得しやすい職場の環境・雰囲気づくりが大事であることが改めて分かった 参加されている他社の皆様は、同じ部署に男性育休取得者がかなりいて、当社の後発度合いを改めて痛感した。「コロナで隔離はされるのに、2週間の育休取得ができないというのはおかしい」というお話はもっともだと思う 男性育休取得は、仕事がまわらなくなるから、という理由で、正直に言うと躊躇派だったが、本日の熊野氏の講義により、今までの自分の旧い考えが恥ずかしくなったので改めたい 私自身は人事歴も浅いので、厚労省のサイトも確認し、当社でも出来そうなヒントをそこから得てみたい 男性の育休取得の必要性についてデータを基に理解することが出来た。また、女性のパート社員が増加しているものの、正社員が増えていないというデータが大変印象的だった。女性の取締役や管理職の比率を引き上げる際のボトルネックが正社員の母数であると考えると、パート社員の正社員化も一つの方策になるのではないかと考える。また、パート社員に留まる背景を解析していくことで、家庭内の役割分担や社会風土も見えてくるように思った 男性の育休取得を阻む7つのカベが、当社の現状に全く当てはまり、それを取り除くことの必要性に改めて気づかされた 男性育休取得の必要性を、どのような論理で社内展開すれば納得性が高まるのかという部分に悩んでいたので、非常に分かりやすく参考になった 弊社も決して男性社員の育休取得率が高いとはいえないが、1か月以内であれば年々増えてきている。その中で、復職後の家庭と仕事との両立に悩みを持っている様子が伺える。最近では、コロナ禍でテレワーク中心の社員も多く、特に未就学の小さな子供がいる人は、両立に悩んでいると思われる。女性社員だけでなく、復職後の男性社員に対しての支援策も会社として模索している
  • 登壇者の感想は・・・

    子育て支援 熊野 英一 氏

    「男性でも2週間から1ヶ月程度の育休を取れるような職場環境を整えられば、実はその他の制約がある社員も働きやすくなります。また、ウイルス蔓延時や災害等の緊急時にも対応ができます。生産性の高い組織を目指すならば、他社の事例に学びつつも、自社が先行事例を作る気概で、新たな施策を実行してほしいと願っています」