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セミナーレポート

トークセッション

働き方と人材活用/人材育成の最新事情
《第3回》 企業間の“レンタル移籍”を活用した、人材育成・事業開発・価値創造

株式会社ローンディール 代表取締役社長 原田 未来 氏
「退職学」の研究者 佐野 創太 氏

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「隣の芝は青いのか?」・・・・・・(株)ローンディール代表取締役社長の原田未来氏のこうした素朴な問いからスタートした『企業間レンタル移籍プラットフォーム』は、激変の時代に全ての企業に求められている“イノベーション人材”を創出するための有効な仕組みになっています。
3週連続の最終回となるトークセッション、今回は原田氏に越境学習に関する最新情報とその活用ポイントを語って頂きました。
前2回に引き続き、今回も「退職学」の研究者である佐野創太氏によるインタビュー形式にて約1時間、様々な切り口から越境学習の効用に迫りました。
以下は代表的な質問と、原田氏からの回答の要旨です。

Q1.ローンディールを始めたきっかけは?

私が新卒から13年在籍した会社で感じたことは、「組織への愛着」と「自らの成長の鈍化」ということ。自分の経験・能力が他の会社でも通用するのか?を試したかったが、それには退社し転職するという手段しか当時はなかった。会社を辞めずに外の世界を見ることができないだろうか?その想いからローンディールは生まれた。

Q2.越境学習とは、どのようなことか?

ビジネスパーソンが、所属する企業や組織の枠を超え、自らの職場以外で学びを得ること。具体的には大企業の人材を約1年間、ベンチャー企業での業務を体験してもらうプランを総合的にサポートしているのが、当社が推奨する“企業間レンタル移籍”の仕組みである。

Q3.なぜ越境学習が、今必要なのか?

大企業になればなるほど、イノベーション人材の育成が急務と言われる。そのためには、既存事業を深堀する「知の深化」と、越境学習を通じて体験する「知の探索」を組み合わせることが必要だと考えている。

Q4.人材を送り出す企業は、なぜ社員をレンタル移籍させるのか?

最も大きなメリットは「圧倒的に人が育つ」ことにある。ベンチャー企業は大企業と比較してリソースが不足しており、そのかわりに今まで大企業で経験した仕事と全然違った範囲とスピードで仕事を要求される。“できるか、できないか”ではなく、“やるか、やらないか”というシビアな環境に置かれることにより、必然的にマインドセットが変わり、半年で見違えるように変化するケースが多い。

Q5.レンタル移籍の開始直後は、どのような様子なのか?

正直に言って、レンタル移籍される方の最初の数か月は「結構つらい」と思う。それまでの大企業での仕事は与えられるものであり、周囲がフォローしてくれていたが、ベンチャーではシビアな環境に強制的に放り込まれ、待ったなしのスピードで自ら切り拓いていかないといけない。

Q6.上手くいかずに、辞めてしまうのでは?

依頼先の企業と弊社で「本当に修羅場に行く覚悟があるか?」を事前にしっかりと確かめた上で対象者を選考する。また、受入先のベンチャー企業とも綿密に面接を実施する。参加者自身が「共感する」ベンチャー企業を自ら選び、チャレンジするような仕組みにしているため、ミスマッチはあまり発生しない。

Q7.レンタル移籍から 戻ってきた社員は会社を辞めてしまわないのか?

過去レンタル移籍を実施した93人中1年以内に元の会社を辞めた方は3人しかいない。その理由として、越境人材として選抜された人には「会社から投資されているのだ」ということをしっかりと伝え理解してもらい、自覚させていること。そして移籍が終了した後に、どうやってその経験を活かすのかを、現場の上司や人事部も一緒になって一生懸命考えていること。最後は「やっぱりベンチャーはめちゃくちゃ大変だった」という体験から、自分たちがいかに恵まれた環境にいるのかを再認識出来ることもメリットのひとつである。

Q8.レンタル移籍者には、移籍中にどんな変化が起きるのか?

一例を挙げると、最近の傾向として研究開発部門の方からのエントリーが多い。移籍先では、全く違う業務に従事することが多く、いきなり「webマーケティング業務」をやってもらうこともある。研究室とは違い、顧客からダイレクトにお礼やクレームを受け付ける経験は、今までにはない「手触り」を感じ、大きな気づきに繋がり、マインドセットのきっかけとなる。全く違う業界や業務で越境体験する方が、より多くの気付きに繋がるようだ。また移籍者は、最初の3か月で今までの経験を「アンラーニング」し、大企業での経験とベンチャー企業での経験を兼ね備えた「ハイブリッドな人材」に成り得る可能性が高い。

Q9.レンタル移籍者は、復帰後に組織にどのような変化を及ぼすのか

移籍終了後、その経験を活かしたいというポジティブな想いから、いろんなハレーションが起こり、モチベーションは一時的に低下することがある。当社では、終了後3ヶ月間は定期面談等を実施し、一緒に伴走するようにしている。自社に戻ってからすぐに大きな影響を及ぼすことはできないが、多少時間がかかっても、その経験を自らの「言葉」に翻訳し、地道に伝えていくことにより、個人の成長が組織の変革へと活かせるようになると思う。

◎トークセッションを終えて

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    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    トークセッションに3回とも参加したが、シリーズを通じて、企業と個人の関係も人材活用方法も多様化していることがとても良く理解できた。特に若手や中堅社員にとって、外でチャレンジできるチャンスがあることは大きな魅力になると思う 越境体験を単純に、ベンチャー企業やスタートアップ企業の職場体験程度に思っていたが、考えていた以上に意義深いもので、自社でどう活用できるかを是非考えてみたい 越境学習により学んでもらったことを、戻った後で具体的にどのように活かすかまでを一貫してデザインしてプログラム化していることに驚いたが、こうしたフォローがとても重要であると再認識した レンタル移籍は本人にとって過酷な環境だからこそ、成長につながる良い人材育成手法だと感じた。レンタル期間を通じて得たものを中長期でどう活用していくかを、会社と本人の間で明確にし共有しておくことが大切だと思う 多様な選択肢が増えた分、自分自身がどのように成長したいか、働きたいかをしっかりと考え、自己責任で選択していく必要があり、まさにそうした自律型人材が今求められているのだと思う 「かわいい子には旅をさせろ」、そんな言葉を思い起こさせた。ぜひ自社でもチャレンジしたいと思う 海外に行かないと日本の良さが見えないように、変化の激しい時代だからこそ、社外に社員を送り出す越境体験は、今まで以上に必要になってきたと実感している
  • 登壇者の感想は・・・

    ローンディール 原田 未来 氏

    (株)ローンディール 原田 未来 氏

    「個人と組織の関係性が多様になっていく中で、いかにして組織が個を活かせるかということが重要になってきました。でもそれは、昔から日本の組織が大事にしてきたことであるようにも思えます。組織がどうあるべきか、今後も皆さまと議論を深めていければと思います。今回はトークセッションにご参加いただき、ありがとうございました」
    「退職学」研究者 佐野 創太 氏

    「退職学」研究者 佐野 創太 氏

    「『レンタル移籍』は、個人と組織の関係を根本から変えていく一方で、「日本型雇用」の懐かしい価値も提示していました。組織への愛着を保ちながら、社外の異なる環境に触れていく。そんな相反するような価値を両立させることが出来るようになっています。個人と組織が手を結ぶ新しい関係を、また皆様とお話しできれば幸いです」