ホームセミナーセミナーレポート人事実践セミナー 2021年5月28日

セミナーレポート

人事実践セミナー

ニューノーマルへの適応に向けた「ピープルアナリティクス」の活用と最新動向
~データドリブンHRの実現に向けて人事がいま準備すべきこと~

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 理事 北崎 茂 氏

このセミナーの案内を見る

今回の人事実践セミナーは「ピープルアナリティクスの入門講座」として、ピープルアナリティクスとは?そしてその活用により実現出来ることと、始めの一歩の踏み出し方を、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の北崎茂氏に、わかりやすく解説して頂きました。
以下が講演の要旨です。

■私たちを取り巻く環境の変化

ビジネス構造の急速な変化や働き方改革など、人事部門を取り巻く環境としては多様化が進み、過去の経験や勘が効きづらい「非連続性」の高い環境へと変化している。全世界49カ国1246名の経営・人事責任者を対象に「人事部門がさらされている 8つのリスクケイパビリティ」をリサーチした結果、「データを活用した意思決定」が41%にも上り、 人事部門にはデータを活用して的確に業務を行っていくことが求められていることがわかった。HRテクノロジーの活用による人事の役割・機能の変化は、「業務の効率化」「従業員視点の強化」を経て、2015年前後から「生産性・共働への注目」へと変遷を遂げ、コラボレーションを実現し、如何にイノベーションを創発するかに関心が移ってきている。

■ピープルアナリティクスとは?

《ピープルアナリティクスの定義》
人材マネジメントにまつわる過去~現在の様々なデータを活用して、人材マネジメントの意思決定の精度向上や、業務の効率化を実現する手法を指す。

ピープルアナリティクスを活用するねらいとして「勘や経験に依存した人材マネジメント・意思決定からの脱却」や「データ分析を活用した業務の効率化(自動判断等)」などが考えられるが、先進企業がめざすピープルアナリティクスは、人事部門の中で管理するPOCや人事データ主体主義から、各事業部門や現場で活用できる「ワークスタイルビジネスデータ」への転換であり、現場でピープルアナリティクスを活用できることだ。その実現のためには、人事部門に管理されている各データソースをETL処理にて「データレーク」にプールし、BIツールによる分析基盤を構築することが必要だ。「データレーク」を構築することで、データ間の連携を通じた、データ収集・データ加工・データ分析の効率性及び再現性が高まる。人事部門における人事データ分析の位置付けは 「気付きを与える意思決定のサポートツール」「見えない状況の可視化」であり、得られた結果に完全に従い決定を行うべきものではないことは、十分に理解してほしい。

■今後、ピープルアナリティクスに起こる変化

コロナ禍において、コミュニケーションの可視化や、キャリアオプションの提示、ダッシュボード化の加速と活用が進んだ人事データだが、今後も以下に示す変化が予測される。

【1】データの変化 「データの民主化」「現場/職場思考」「動的データ活用が加速」(勤怠・給与等の静的データだけではなく、メール等のコミュニケーションテキストデータやパルスサーベイなどのパーソナルデータや動的データの活用が進む)
【2】プラットフォームの変化 BIツールの活用
【3】ガバナンス・アナリティクス組織の変化 普及と統制のバランスをウォッチすることが求められる
【4】ユーザーの変化 人事のためのアナリティクスから、現場マネジメントや従業員価値向上のための活用が進む

■ピープルアナリティクスを構築するために必要な4つの能力

①課題設定力(仮設力)
②データ化力(変数設定力)
③分析手段選択力
④解釈/説明力
の4つだが、いずれの能力も一部門や一個人で保有することには限界があり、人事部門のみならず、IT部門等と協力体制を構築し、組織として保持することが重要だ。

■ピープルアナリティクスの活用ポイント(まとめ)

①既存のデータ活用には限界がある。仮説検証のために必要なデータを取得する。
②人事システムは、統合管理から連結型へ。
③継続的なデータ分析の実現にはデータレークが必要。
④アナリティクススキルを一個人で保有することには限界があり、人事部門だけではなく、いろんな関係部門との連携を強化し、組織化し実現していくことが重要。

◎セミナーを終えて

  • セミナーの内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    当社でも最近、タレントマネジメントシステムを導入したが、本日のお話は、今後のシステム有効活用や更なる進化を検討する上で、とても参考になった これまで勘に頼ってきた人事を、データに基づいて判断する必要性を再認識した もともとIT部門で企画開発・デジタルマーケティング等を担当していたため、人事領域でもデータや数字で、結果が可視化できれば、より良い人材開発や組織開発が実行できると感じていた。本セミナーで何となくその糸口が見えてきた気がする。北崎氏の著書も購入して読んだが、たいへん勉強になった 実務的視点も含めてお話し頂き、とても参考になった。また、Q&Aでも、ピープルアナリティクスのビジネスへの貢献について回答して頂き、営業KPIのような数値で経営インパクトがある訳ではないので難しいが、エンゲージメントを高められれば、副次的に経営へのインパクトがあることを、経営者やマネジャー層に示していかなければならないことが良く理解できた。しかしながら実はその点が、日系企業においてはチャレンジする上での高い壁なのだが・・・ データ/人事に強い人材を集めて組織化し、ピープルアナリティクスの知見を深めるという点が、興味深かった 今進めていることに対する気付きや、市場の動きなど、得るものが非常に多い時間だった 基礎知識が不足しているため、講義はやや早口に感じたものの、簡潔明瞭でポイントを捉えやすい内容だった 今度は、事例で取り上げてくれた配置やローパフォーマー分析など、1つ1つの具体的な分析フロー等を深く聴いてみたい データを収集する重要性は理解しているものの、活用に難ありと思っている。データは過去の積み上げでしかないので、それを未来への予測にどう反映させるかは、人事としての先見性が問われる 参考にはなったが、データレークでの連結や、しっかりと組織化して取り組んでいかないと、効果が発揮できないことも痛感し、導入はしたいもののハードルの高さを感じた 私の理解力不足もあって、少し内容が難しく感じた。架空企業名でも構わないので、もう少し「人材データ活用の生事例」をご紹介して頂ければ、より深く理解できたかと思う
  • 登壇者の感想は・・・

    一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 理事 北崎 茂 氏

    ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 北崎 茂 氏

    「今回のセミナーを通じて、ピープルアナリティクスに対する各企業様の関心が高くなっていることを改めて再認識しました。また、皆様から頂いたご質問の内容も、数年前と比べて高度化しているとともに、COVID-19の影響が長引くなか、人材マネジメントについてアナリティクスを通じ可視化していくことの重要性を改めて強く感じました。今後においても、皆様に必要な様々な情報提供を引き続き行っていきたいと考えております」