ホームセミナーセミナーレポート人事戦略フォーラム 2021年10月26日

セミナーレポート

人事戦略フォーラム

コーポレートガバナンス・コードの改訂と経営人事へのインパクト

デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター 今野 靖秀 氏
デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー 淺井 優 氏

このセミナーの案内を見る

2021年6月、金融庁と東京証券取引所が3年ぶりに、コーポレートガバナンス・コードを改訂しました。
今回のフォーラムは、デロイト トーマツ コンサルティングの今野・淺井の両氏から、人事面から見たこのコーポレートガバナンス・コード改訂のポイントについて、経営人事視点から人事部門が対応すべき重要事項を中心に、解説して頂きました。

最初に、コーポレートガバナンス・コードの概要と今回の改訂ポイントについて簡潔にご説明していただき、その後、以下3つのテーマを中心に、詳細なお話を頂きました。講演の要旨は、以下の通りです。

1. 指名/報酬委員会の運営方法の見直し
役員の指名や報酬は、会社の理念や戦略を実現する人材を確保し動機づける仕組みとなるべきで、それを議論する両委員会が重要な役割を果たします。今回のコーポレートガバナンス・コード改訂により、指名/報酬委員会の独立性が求められ、委員会構成員の過半数を独立社外取締役とするなど、両委員会の役割の重要性がさらに増しました。そしてジェンダー等の多様性やスキルを考慮した指名も求められています。
報酬の決定には、中長期業績を踏まえたインセンティブや、客観性や透明性のある手続が求められます。昨今では役員報酬にESG指標を取り入れる企業も出始め、今後増えていくことが期待されています。役員指名については、CEO等の後継者計画、選任・解任に加え、取締役のスキルマトリックス策定の指針が追加されました。

2. スキルマトリックスの可視化と開示
今回の改訂の中で、取締役のスキルマトリックスの開示が非常に注目されています。取締役会の多様性に向けた検討は、指名委員会がリードすべき役割を担っており、経営戦略の実現に必要な経験やスキル、多様性を特定・評価し、継続的に改善することが必要です。取締役会は、その役割・責務を果たすために、ジェンダーや人種・国際性などの「属性」と、年齢や能力、経験などの「スキル・専門性」を組み合わせることが求められますが、それらを可視化するためのツールがスキルマトリックスです。その作成においては、現在および将来の経営戦略と、必要な能力・スキルを整合させることが重要とされています。

3. 中核人材の多様性確保
さらにもう一つ、今回の改訂の大きなポイントが、中核人材の多様性確保です。労働人口減少や技術革新への対応のため、これまで企業ではダイバーシティを推進してきましたが、その対象が経営層に加え、それを支える中核人材へと移ってきました。
もともと日本企業における女性・外国人など多様性の促進は大きな課題であり、強力に推進するための具体的施策が企業には求められています。経営陣や従業員に関しては、D&I方針・組織体制の整備・実行や、多様性確保に向けた方針・目標・進捗状況の開示などを検討していくことが求められ、これらを実現するための総合的な人材マネジメント改革の推進が必要です。そしてD&Iに加え、「平等」ではなく「公平」が実現されている環境、つまり、Diversity, Equity and Inclusionの実現を目指すことが重要です。

尚、参加者の皆様への事後アンケートで、『今回の主要3テーマに関し、自社の今後の課題となると思われるものはどれですか?(複数回答可)』と伺ったところ、
・指名/報酬委員会の運営方法の見直し=25%
・スキルマトリックスの可視化・開示=44%
・中核人材の多様性確保=88%
という結果となり、とりわけ「中核人材の多様性確保」に対する課題認識が、改めて浮き彫りになりました。

◎フォーラムを終えて

  • フォーラムの内容は参考になりましたか
    (参加者アンケート結果から)

    グラフ
  • 参加者の意見・感想は・・・

    先進企業の実例は、今後のKPIづくりをする上での参考にしたい。女性に対するアプローチは、当社でも同様の課題を抱えている。キーとなるデータ(エビデンス)をしっかり示すことが大切だと理解した D&Iの取り組みについて社内の議論は、施策が中心になりがちで、それらが果たして自社が求める中核人材の活躍に結び付くのか、釈然としないものがあったが、本日のセミナーで考えが整理できたように思う D&Iの施策はEquity>Equalityであり、一人ひとりに合ったテイラーメイドが必要というのはとても納得する一方、いざ実現するのはかなり大変ではないかと思った 大変わかりやすい資料と説明だった。重要なトピックではあるが、なかなか日々のオペレーションの中で時間を取って、じっくりと勉強したり調べたりしきれていなかったので、本日の資料を再度熟読し、しっかりと自社の施策を考えてみたい 中核人材の多様性確保に対する課題認識が進み、自社における取り組みを進める上で参考になった 本日のテーマは、何れも当社で課題となるものばかりで大変参考になった。 本日の講義や他の参加者からの質問にもあったが、やはり当社でもダイバーシティ推進を進めるうえで「逆差別ではないか」という発言が多くなってきた。改訂CGコードにおいて、人的資本や知的財産への投資情報の開示についても、詳しくお話しが聞ける機会があるとありがたい 知識の習得の面では大変参考になったし、理論的な補強としては役に立った。但し、やや形式的な内容が多かったので、実際の企業活動とのつながりに関してはかなりギャップがあると思う もう少し中核人材の確保について、具体的な組み立て方を教示してほしかった
  • 登壇者の感想は・・・

    デロイト トーマツ コンサルティング 今野 靖秀 氏

    デロイト トーマツ コンサルティング 今野 靖秀 氏

    「2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂は、役員報酬や指名の領域に加え、多様性のある人材確保やそのための人材育成方針に踏み込んでおり、従業員にとっても人事にとってもたいへん重要な内容です。コードの順守ももちろん重要ですが、さらに自社にとってどのようにD&Iに取り組むのかを考えるヒントに、今回のセミナーがなったなら幸いです」
    デロイト トーマツ コンサルティング 淺井 優 氏

    デロイト トーマツ コンサルティング 淺井 優 氏

    「ダイバーシティの推進は、20年前からある古くて新しいテーマです。2021年のコード改訂を通じて、各企業での更なる取り組み推進・強化が求められている一方、様々な課題があることも改めて皆様から共有頂きました。今回のフォーラムが、各社での検討を進めるうえでの参考となれば嬉しく思います。ありがとうございました」